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歌仙図色紙 清原元輔
清原元輔 紙本・着色 25.5㎝×27.1cm

 歌仙絵は三十六歌仙の清原元輔だが、和歌は『新古今集』188「夏草はしけりにけり/な玉ほこの/道ゆく人も/むすふはかりに」 (藤原元真)が記されている。同歌は『元真集』(西本願寺本93)に詞書「右」と記されて収容される。同集67の詞書に「おなじ八月廿三日、女みやの前栽合歌」、及び同集93詞書「おなじ方のれう」とあるのによれば、天徳三年八月に斎宮女御徽子女王前栽合が催されたので、斎宮女御徽子女王の催事の料として詠まれたもの。なお『定家十体』234には作者を「ゑけい」即ち恵慶法師とするが、『定家八代抄』は元真歌とする。
 元輔図と詠歌が一致しないのは歌仙図としての価値を低めるが、絵師と和歌書写者の分業でこの色紙が成っていることをあらためて教えてくれるほか、それだけにこの事例の如く不一致の作品も多く存在したであろう事を推測させる、色紙制作上の貴重な資料でもある。因みに和歌書写者は「元輔」と「元真」の名前の類似による誤謬と見られる。