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源氏物語図 帚木 雨夜の品定め 文渓画

源氏物語雨夜の品定め図(部分) 文渓筆  軸装 絹本着彩 198×57㎝

 この図は源氏物語帚木巻の雨夜の品定めの場面を描く。五月雨の長雨が続く夜 に、17歳の源氏の宿直所へ頭中将、左馬頭、藤式部丞が訪ねてきて、女君たちの品定めが始まった。頭中将は女の品に三階級あることを説き、左馬頭は中の品に思いがけない女が存在することや理想の妻が少ないことを嘆き、夫婦間の忍耐と寛恕とを説く。藤 式部丞は賢い学者肌の女との体験を語る。源氏は特に口を挟まずに聞き役に徹している が、教養のある女に浮気された左馬頭の体験談などには強い興味を覚えた。
 今回掲載図では省略したが画面上方には五月雨が降って青柳が糸を揺らしている室外の景が描かれている。画面の中央には二階厨子描かれ、錦の敷物を下敷きして上段には火取の香炉が置かれ、下段には硯箱や女君たちから贈られたと見られる消息文が置かれる。下段の下には開き戸が開放されて冊子本が重ねて置かれているのが見える。源氏は茵に着座し、脇息に右肘を置いて居眠りをしている。源氏と頭中将の妹・葵の上との夫婦関係がうまくいっていない実情に、形勢不利と察した源氏が狸寝入りを決めこんでいる件を描いているのであろう。源氏の手前には油単と呼ばれる打敷が敷かれ、その上に高灯台が置かれている。灯械の上に油盞が置かれ油の浸みた灯心が赤々と火を点している。夜の場面であることを見る人に印象づけている。垂纓の冠姿に黒の直衣を着用しているのが頭中将、赤色の直衣姿が式部丞、両耳の上に緌を付け巻纓の冠、縹色の直衣に石帯を着用している武官姿が左馬頭と見られる。