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伊勢物語図 東下り 尾形光琳筆

伊勢物語 第9段 業平東下り図  尾形光琳筆  1658〜1716(万治1〜享保1) 享年59才。 紙本・着色 一軸 102×42cm 《複製本/原画は五島美術館所蔵》 

 図像は『伊勢物語』第9段東下りにおける次の一節をモチーフにする。「富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。 『時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらん』  その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ねあげたらんほどして、なりは塩尻のやうになんありける。」
 駿河の国まで下ってきた男が、すでに仲夏であるのに雪を頂く富士の山に感動して和歌を詠む場面である。『伊勢物語』には図像が描かれていなかったので富士の山容の実際を知らぬ読者のために、比叡山を引き合いに出して補足の説明をしている。「時知らぬ」の歌は、『新古今集』巻十七、『古今和歌六帖』巻一、『業平集』にも見える。
 尾形光琳は、江戸中期の絵師で幼名を市之丞といった。名は惟富・方祝・伊亮など。装飾的大画面を得意とし、「琳派」の代表的絵師である。元は屏風六曲一双全十二図の中の一図で、後に軸装になったという。






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