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源氏物語 葵 車争い図 海老名正夫画

源氏物語 葵 車争い図 海老名正夫筆 内外タイムス社 昭32年 木版画 24×32.8㎝

 源氏22歳の四月中の酉の日、賀茂の祭の御禊が行われた。源氏の正妻葵の上も侍女たちにせがまれ、牛飼や従者を大勢連れて賀茂祭を見物しに出かけた。ところが、その行く手に、網代車の使い古した女車が居座っていて道を譲ろうとしない。葵の上の従者たちは、その車の主人が葵の上の恋敵六条御息所と知ると、威光をを笠に着て、六条御息所の牛車を葵の上の供人たちの車の後方へ追いやってしまった。御息所は見物もできない状態になり、そればかりか牛車の榻などもみな押し折られてしまい、体裁が悪く、どうして見物に出て来たのだろうと後悔させられた。これがいわゆる「車争い」である。さんざんな目に遭わされた六条御息所は、こののち源氏と葵の上とを深く恨んで、葵の上が男児(後の夕霧)を出産する時には生き霊となって乗り移り、分娩後には葵の上をに死に至らしめることになる。
 この図はその車争いの場面を描いたもので、手前が葵の上の車、左が六条御息所の車である。