源氏物語 花散里 交情の図 海老名正夫筆  内外タイムス社 昭32年 木版画 24×32.8㎝

 桐壺帝の女御であった麗景殿女御の妹花散里は、地味な人であったが、宮仕えの間に源氏と関係ができ、桐壺帝の死後は麗景殿女御と生活を共にして、源氏からの仕送りを受けて細々と暮らしていた。おりしも源氏は右大臣に朧月夜との密会の場を見られてしまい窮地に追い込まれていた。そうした中で源氏は花散里の存在を思い出し、五月二十日の月がさし昇る夜に、久しぶりに花散里を訪ねた。源氏は夜もすがら語り明かして心を慰めた。花散里は源氏の疎遠を恨んでいたが、仲違いなどもなく、源氏と花散里は情を交わして過ごしたのである。
 この場面は源氏と花散里との交情を描いた図像である。つかのまの慰めを求める源氏と、そのかいな抱かれて疎遠も忘れてしまう花散里とを見事な構図で華麗かつ優艶に描く。






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源氏物語 花散里 交情の図 海老名正夫画