現時五十四情十一号 帚木 豊原国周(1835-1900)
明治17年(1884) 木版 多色刷 35.3×24.3p
「現時五十四情」のシリーズ名は、「源氏(物語)五十四帖」に音通させたもの。図像左上の冊子形の中に、『源氏物語』の帖名とそれに因む和歌と俳句を、源氏香を散らした料紙の上に記す。絵は当世風俗を描くが『源氏物語』帚木巻をパロディー化してぐずっている赤児の機嫌をとりながら乳を含ませる母親を描くなど多少の関連づけをしている。 国周は、本名大島八十八、後に母方の姓を次いで荒川を名告る。押絵師であった長谷川派豊原周信に学び、幕末から明治時代に活躍した浮世絵師。役者絵を得意とし、特に役者大首絵で評判を得る。明治に入って三枚続きに役者一人半身を描く新しい構図を創案したのも国周で、大首絵の迫力を更に拡大した様式として注目された。 |