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枕草子 清少納言図 
清少納言

「香炉峯の雪」撥簾の図
を描く。御簾を撥げる清少納言の背後に御帳台が描かれ、その中に着座する皇后定子の姿が描かれている。多数存在する撥簾の図において定子を描くものは極めて少なく、そうした点において本図は貴重な図像資料である。
 「平安朝中一条天皇の御代には才媛花の如く宮中に集り其間に大文学が蔚然として起り文学史上に傑作を遺した就中清少納言は皇后定子に仕へた男勝りの才気縦横な婦人で其随筆枕草紙は観察の鋭敏と着想の妙を以て聞へてゐるある年の冬雪の日皇后は御前の女房たちに向はせ給ひ「香爐峰の雪は如何にと」仰せられた納言は直ちに起ちて御前の御簾を捲上げた白楽天か老後に盧山の麓に庵を結んで住んだ折によんだ詩の中に
  遺愛時鐘欹枕聴香爐峰雪撥簾看
とあるを皇后には御会得あつて仰せられたのを当時は皆かゝる詩は暗記し口ずさみもしてゐたが不意に考へ及ばなかつたを早くも清少納言は御心を推し奉つたのである紫式部と共に其文名を歌はれた」(「日本歴史図絵第29」『日本歴史』第四集 昭和4年11月による)