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伊勢物語 都鳥 土佐光起筆 
伊勢物語 都鳥 土佐光起筆  141p×41p

『伊勢物語』第9段 都鳥の場面。

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なほ行き行きて、武蔵の国と下つ総の国との中に、いと大きなる河あり。それを隅田河といふ。その河のほとりにむれゐて、思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかなとわびあへるに、渡守、「はや舟に乗れ、日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らんとするに、皆人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さる折りしも、白き鳥の、嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びとつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。渡守に問ひければ、「これなん都鳥」といふを聞きて、
   名にし負はばいざこととはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。
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