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源氏物語桐壺巻 土佐光起画 鷹司前関白兼煕筆
源氏物語桐壺巻 土佐光起画 鷹司関白兼煕書

 右側の絵は土佐光起(元和3年-元禄4年 1617-1691)筆になる。光源氏12歳の時、清涼殿の東廂で行われた元服の場面を描いていると見られる。父桐壺帝の計らいで東宮(後の朱雀帝)に劣らぬ盛大な儀式であった。御簾の下には倚子に着座する桐壺帝を描き、廂の間には角髪(みずら)姿の源氏と、加冠役の左大臣が帝の前に進み出るところを描く。この場面を『源氏物語』桐壺巻では、「おはします殿の東の廂、東向きに倚子立てて、冠者の御座、引入の大臣の御座御前にあり。申の時にて源氏参りたまふ。みづら結ひたまへるつらつき、顔のにほひ、さま変へたまはむこと惜しげなり。」と記述する。
 左の色紙詞書には「むすびつる心もふかき/もとゆひにこきむらさきの/色しあせずは/そうしてながはしよりおりて/ぶたうし給ふ左のつかさの御/むまくら人所のたかすへてたま/はりたまふ」とある。この兼煕が書写した本文は青表紙本『源氏物語』に準拠しており、左大臣が光源氏の元結を奉仕した折に、桐壺帝の和歌に唱和する形で返歌を奏上し、長橋より下りて舞踏した一節に相当するものである。
 なお、本図の土佐光起画は、図様の類似するものに出光美術館蔵の伝土佐光吉(天文8年-慶長18年 1539-1613)画『源氏物語図屏風』があり、その影響下に成ったものと推測される。