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キャンパーは変えられない


 先日、東京国際フォーラムで開催された「全国学生相談研修会」に参加してきました。これは学生相談に関わる全国の大学の教職員が精神科医やプロのカウンセラーのもとで研修を受けるというものでした。講義あり実習あり、盛り沢山の3日間で結構ヘトヘトになりましたが、日常の学生との関わり方も含めて対人関係における自身の癖や傾向に気付いたり、またキャンプの場面に照らし合わせて考えられる事柄もあり、得るものの多い研修となりました。こういう機会は大切にしたいものだなぁと感じました。

 なかでも印象に残っているのは「過去と他人は変えられない」(バーン:Eric Berne,1910-1970 交流分析の創案者)という言葉です。この言葉は講義の中でカウンセリングには限界があるということの説明として紹介されたものですが、「変えられるのは未来と自分だけ」ということでもあるとのこと、言われてみれば「ごもっとも」という感じですが、妙に納得してしまいました。

 キャンプ的に表現すれば「キャンパーは変えられない」「キャンパーを変えられるのはキャンパー(本人)だけ」ということになるかと思います。このように考えると、キャンプを提供する側がキャンパーにできることには限界があるということは自覚しておいたほうがよさそうだという気がします。これはキャンプを提供する側ができることを過小評価するということではなく、キャンパー自身が自分を変える力を持っていることをキャンプ提供者側が、そしてキャンパー自身も信じていることが大切であるということです。

 その信念のもとにキャンパー本人が変わっていく(成長する)きっかけを与えたり、それを援助することがキャンプを提供する側の頑張りどころであり、同時にキャンパー自身の頑張りどころでもあるのかもしれません。そこら辺がうまくかみ合ったら本当にいいなと思います。そこに僕はキャンプの醍醐味を感じるし、逆にその部分にワクワクしなくなったらキャンプをやめちゃうかもしれません。

 イソップ物語の『北風と太陽』にあるように、旅人のマントを強風を吹かせて無理矢理脱がそうとした北風のやり方ではなく、ぽかぽかと暖めて旅人が自らマントを脱ぐよう仕向けた太陽のやり方のような、「ぽかぽか感」みたいなものを状況に応じてキャンパーに提供できたら素晴らしいですね。簡単なことではないので努力目標として、僕も少しずつでいいから自分で自分を変えていけたらいいなと思っています。


       2004年 大東大 文学部 教育学科キャンプ 記録集より.