〜民初的書肆〜

休題8

 民国初期に於ける中国の出版事業の中心は上海で、印刷技術の進歩(排印)や簡便(石印)さ等に因り、それこそ雨後の竹の子の如く出版社が出現し、お堅いものは伝統的な経書(古典)から始まって、軟らかいものは情人小説(大衆読み本)に至るまで、ありとあらゆるものが手頃な中型本の大きさ(縦20cm横13cm)出版されている。それらの書肆の中には清朝以来の有名書肆である掃葉山房などが含まれてはいるが、大半が清朝末から現れた書肆に因って占められ、『香閨夢』を出版した碧梧山荘や『梅花夢』を出版した有声書局、『後紅樓夢』を出版した振華書局、『女才子』を出版した南華書局、『彭公案』を出版した江東書局、『施公案』を出版した広益書局、更には大通書局・啓新書局・文宣書局・申昌書局・明善書局・海上書局・珍藝書局・古今書室・賞奇軒・申報館・古書流通處など、あまり聞き慣れない書肆が多いものの、その中に在って当時の上海を代表する書肆としては、古典から大衆小説まで幅広く扱った錦章書局、読本シリーズで名を馳せた文明書局、古典の史書を石印で手がけた文瑞樓、経書から小説までをメインとした掃葉山房の四大書肆が挙げられよう。しかし、当時のこれらの中型本は、扱っている内容があまりにも幅広く、且つ廉価で簡便であったため、読み捨て使い捨ての傾向が強く、出版された総量に比して残存しているものは、概して少ないと言えよう。
 ここに提示する四點は、上段右側が掃葉山房の『桃花扇』で、左側が文瑞樓の『『史通通釈』であり、下段の右側が錦章書局の『忠烈小五義』で、左側が文明書局の『南北朝文評註讀本』である。

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