〜目で見るヒーロー・ヒロイン〜

休題11

 清末から民國時期にかけて、袖珍(豆)本形式で多量の情人小説や侠義小説が出版されるが、それらは、基本的に娯楽を目的とした大衆小説であるため、大概巻頭や巻中に登場人物や場面の繪圖が付けられている。将に綉像本とか繪圖本とか称される所以でもある。これらは版画であり、当時の大衆版画の資料として貴重ではあるが、如何せん廉価な大衆小説であるが故に、時代が近いわりには読み捨て・使い捨てにされ、現存するものはあまり多くはない。大衆小説を娯楽として読みふけるのとは別に、これらの繪圖だけを眺め回して見ると、当時の出版文化の状況や大衆の嗜好が窺え、それはそれで楽しいことである。
 ここに提示する繪圖は、左側から『天雨花』・『二才子侠義風月伝』・『揚州府』・『緑牡丹』・『緑野仙綜』の中心的登場人物、つまりヒーロー・ヒロイン達である。ちなみに上段がヒーローで下段がヒロインである。

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