〜訓蒙(幼學)書〜

休題12

 訓蒙書或いは幼学書と呼ばれている書籍は、その書の対象に基づいた便宜的な呼称で、所謂「中国書誌学」の中で一般化した専門用語ではない。本来これらの書は、その内容に基づいて経の部の小学や子の部の雑家などに分類されている。つまり訓蒙書とは、子供や女子に文字や知識を覚えさせることを目的として作られた書籍のことで、その学習対象者に依拠して幼学書とも呼ばれているのである。文字を覚えさせる目的では『急就章』がその嚆矢であり、次いで六朝時代の『千字文』が有名である。故事成語に関しては唐の『蒙求』が代表的なものであり、歴史知識に関しては元の『十八史略』が有名である。その後、明代になると、文字も故事も知識もと欲張った、丁度『千字文』+『蒙求』+『十八史略』の様な訓蒙書が作られ出すが、これが「三字経」・「四字経」・「六字経」と呼ばれるもので、見出しに三字句や四字句・六字句のタイトルを大書し、その後或いはその下に字句の内容や故事を書き連ねると言うものである。
 ここに提示する訓蒙書は、清朝末光緒3年(1877)に、掃葉山房蔵版で弁山書楼が校刊した、訓蒙四字経である『新増龍文鞭影』であるが、『龍文鞭影』自体は、既に明代に蕭漢沖に因って作られた本である。

[目次に戻る]