〜指南書〜

休題13

 指南書とは、言うまでもなく何かの技術を指導する手引き書のことで、古来各分野に亘って「某某指南」なる指南書が多く作られているが、書誌学の分野で指南書に関わる一分野が決して独立して一項目を立てている訳ではない。指南書は、その具体的指南の内容に因り、各自の内容分野に入れられているに過ぎない。それらは大概子部に属しており、農業関係であれば子部農家類、占い関係であれば子部術數類、剣術・兵法であれば子部兵家類、書画・篆刻・琴棋であれば子部藝術類と言う具合である。
 ここに提示する指南書は、和書であるが南画家の泰斗であった田能村直入翁が出版し、雪峰村上正武が編述した、大正八年発行の『南畫早學』である。本来は、蘭・竹・梅・菊の四冊、春・夏・秋・冬の四冊、鳥・獸・魚・虫の四冊、合わせて十二冊一函の書籍であるが、残念なことに秋・冬の二冊が欠けた十冊の端本である。

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