〜笑話集〜

休題14

 笑い話は、古今東西古くから存在し、それが人や場を和ませるネタであることは中国でも同じである。表現は、滑稽と言ったり諧謔と言ったり笑話と言ったり、千差万別であるが、要するに、人を笑わせたり口をあんぐりとさせたりする、面白可笑しく呆れた話である。古くは司馬遷の『史記』に「滑稽列伝」が有り、六朝時代の劉義慶が撰した『世説新語』下卷にも「排調篇」などそれに類する話を多く収めている。更に、人を呆れさせて大笑いさせる故事である「解頤」の本ネタは、『漢書』の匡衡伝である。この様に、笑い話自体は古くから諸々の書籍に採取されているが、その笑い話だけを集めて単独の笑話集とした書籍は、恐らく六朝時代の『笑林』や『啓顔録』が最初であろう。これらの笑話集は既に亡佚しており、現在では類書や輯逸書などに因って、その一斑を窺うことが出来る。尚、一般的に笑話集は、書籍分類上「子部小説家類異聞之諧謔」に収載されているが、それは、書かれている内容と、時代が降ると往々にして笑話集に「諧謔小説」とか「滑稽小説」とかの副題が付けられていること、とに因るのであろう。
 ここに提示する笑話集は、共に民國時代初期の石印本に過ぎないが、一つは、民國元年に上海江東書局が発行した滑稽小説『笑林廣記』であり、もう一つは、清朝嘉慶十七年に朱履中が撰した『解人頤廣集』を、民國三年に上洋海左書局が発行した錢慎齋重訂版の『繪圖解人頤』である。

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