〜訓 點〜

雜言2

 訓点とは、漢文を訓読する時の返り点や送りがな等の表記記号のことであるが、それは漢文が日本に伝わって以来、どの様に日本語として同時翻訳するか、日本人が叡智を絞った方法である。一般的には、平安朝以来博士家に因る「古点」と呼ばれる訓読が行われていたが、室町期に至り、その時代に合った新しい言葉での訓読を(新注)提唱したのが五山禅林の桂庵玄樹であり、その考えを引き継いだのが弟子の文之玄昌で、それが所謂「文之点」である。
 江戸に入り藤原惺窩が宋学に依拠して四書五経に加点したものが、所謂「惺窩点」(現存のものは詩経と春秋だけ)で、それを更に発展させたのが、弟子の林羅山に因る「道春点」である。羅山が幕府の侍読と言う地位に在った関係上、この「道春点」は全国に広まり、それを適宜改良する形で、山崎闇斎の「嘉点」・後藤芝山の「芝山点」・日尾荊山の「日尾点」等々、多くの訓点が登場する様になるのである。
 ここに提示する『大学』は、後藤芝山の訓点、所謂「芝山点」に因って加点された『大学章句』である。

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