〜漢文の讀み表記〜

雜言4

 漢籍の書物に於いて、返り点や送り仮名(カタカナ)を付けるのは、和刻本では日常的に見られる表記方法であるが、漢字自体の読みとなるとなかなか複雑で、必ずしも一様では無いように見受けられる。訓読そのままの日本語を、ひらがなやカタカナで漢字の右側に付けるのが一般的な様であるが、必ずしもそれだけではなく、返り点の表記に従って読みを付けたものも存在している。
 ここに提示する漢籍は、明治十四年に文盛堂が発売した銅板刷りの堀勇之助訓点『四書』である。縦12cm・横8.6cmの大きさの本で、所謂「袖珍本」であるが、上からそのまま読む字は漢字の右側に、返り点に従って返って読む字は漢字の左側に、それぞれカタカナで読みが付けられている。

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