〜秘訣(決)・秘笈本〜

雜言12

 書籍の中には、「某某秘訣」とか「某某秘笈」とか「某某秘要」とか書かれた本が多々有る。「秘法」とは秘密の方法、「秘術」とは奥の手、「秘方」とは秘密の方法、「秘要」とは秘密の精義、「秘経」とは秘密の経典、「秘笈」とは秘密の本を入れた箱、「秘訣(決)」とは容易に人に示さない秘密最良の奥の手、と言う意味で、「秘」の字が付くと、何か何処か胡散臭く怪しげな臭いがする。
 当然中身は、具体的な行為が示されるものが多く、兵学・占い・医学・薬学等に関する書籍に多くこの名が付けられている。どうも、この様な名前は漢代以後に使われ出したらしく、『漢書』の『藝文志』には未だ見られないが、『隋書』の『経籍志』には散見する様になり、兵書の『黄石公陰謀行軍秘法』『遁甲秘要』や医書の『徐氏家伝秘方』『序房内秘術』等が有る。
 さてそこで「秘訣」であるが、この名が付けられた嚆矢はやはり六朝時代の医書で、『玉房秘決』であるが、一体何の「秘密最良の奥の手」なのかは、言わぬが花と言うものである。しかし、この「秘」なる字が、深淵なる意味を持って真面目に使われた代表例は、漢詩・漢文の作法を説明した空海の『文鏡秘府論』であろう。
 ここに提示する秘訣・秘笈本は、真面目は真面目ではあるが、どちらかと言えば、いかがわしさが漂う本である。それは、清朝末光緒年間に作られた本で、上段が左から張天法師の『法術秘訣』・天王鎮災の『符法秘訣』・袁柳荘の『神相秘訣』・藏身体の『影法秘訣』の四種、下段が左から楊公造命の『地学秘訣』・風水形気の『命学秘訣』・諸葛武侯の『神卦秘笈』・時珍仙師の『護身秘笈』の四種で、合計八種類である。

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