〜殿 版〜

続編2

 殿版とは、中央官庁で刊刻された一種の官刊本であり、明・清を通じて一般的には内府刊本と呼ぶが、その中でも特に清朝に至り天子の勅命(日本のものに関しては、特にこれを勅版と呼んでいる)に因り、宮中の武英殿修書処で刊刻されたものが、武英殿刊本つまり殿版である。殿版の代表的なものとしては、康煕帝の時に銅活字を用いて印刷した『古今図書集成』や、乾隆帝時代の木活字に因る『聚珍版叢書』等が有名で、殿版と言えば清初のものと言う感無きにしも非ずであるが、決して必ずしもそうではない。武英殿で刊刻したものが殿版である以上、有名・無名は別として殿版は歴代存在するのである。
 ここに提示するのは、清朝末光緒31年の『欽定書經圖説』である。この本は黄表紙の大型版で、圖を伴うため絵図が描き易い石印版で作られており、しかも本文と絵図は黒の一色であるが、地図の部分だけを紅色と黒色とで重ね刷りすると言う、紅黒套版石印本である。

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