〜巻子本〜

続編11

 巻子本は、冊子本が出現する以前の本の形態であり、最初から逐次見たり読んだりせねばならぬ内容のものに関しては、それなりに便利ではあるが、何かを調べるために、見たい所を直ぐに開いて見られると言う簡便性の点では、冊子本に及ばないこと遙かに遠い。我が国では巻子本は、江戸時代以前の経典に良く見られるが、冊子本が一般的になった江戸以降に在っても、門外不出の家伝・秘伝ものに関しては、良く巻子本仕立ての本を見かける。好書家にとって巻子本は、何かノスタルジアを感じさせるものらしい。
 ここに提示する巻子本は、元々巻子本として作られたものではなく、享禄4年に三条西實隆が手写した『孝経』を、江戸の屋代弘賢が寛政12年に冊子本として景刊し、それを『孝経』蒐集家の落合保氏が昭和17年に改装した、巻子仕立改装本である。尚、この巻物の裏打ち紙には、江戸時代の「往来物」の書葉が使用されている。

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