〜欽定本〜

続編16

 欽定本とは、天子の勅命を拝して編纂や選定された本のことで、我が国の勅版本と同じである。ただ何如に天子の意図に基づくものであっても、天子自らが選定したり編纂したり付註したりしたものは、御選何々・御纂何々・御註何々と称して、決して欽定何々とは呼ばない。欽定とは、あくまで天子の詔勅に基づき臣下が編纂したものである。しかし、だからと言って天子の勅命を拝したものを全て欽定と呼ぶのかと言えば、必ずしもそうではない。明代以前のものは決して欽定とは呼ばない。清朝に在って初期三代の康煕・雍正・乾隆の三天子は、文化事業の振興に熱心であり、特に乾隆帝は当時を代表する文化人の一人でもある。則ち,『欽定大清通典』とか『欽定大清律例』の如く、清朝に在って勅命を拝したものが欽定本なのである。
 ここに提示する欽定本は、乾隆13年奉勅選の三礼義疏の一つである、『禮記義疏』の後印本であるが、最初の内表紙には、何如にも天子に拘わる本であること明々白々な五爪の龍が描かれている。

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