〜蝴蝶装〜

続編18

 蝴蝶装とは、本の装丁形式の一つで、巻子本や帖装本(折り本)から現在の冊子本に変化する過程で出現した、宋代初期の代表的装丁方法である。蝴蝶装は書葉の版心を折り目にして文字面を向かい合わせに中折りし、それぞれの書葉の版心を順番に重ね合わせ、重ね合わせた背の部分を外からくるんだ表紙の内側に糊付けしたものである。当然のことながらこの装丁は、本を開いて行けば字面と裏面の白紙とが交互になり、頁を捲るごとに各葉がひらひらする。この様があたかも蝴蝶が羽を広げて舞う様に似ていると言うことから、蝴蝶装と名付けられたようである。しかし、冊子本の如く綴じ糸で綴じる訳ではなく、単に糊付けしたに過ぎないため、剥落し易く直ぐに冊子本に取って代わられることになる。故に伝本は少なく何分宋初の貴重本でもあるため、中国の北京図書館とか台湾の故宮博物院とか或いは我が国の天理図書館等、古書籍収蔵で名の知られた公的機関には所蔵されているが、個人が自由に買い求めて勝手に弄くり回せると言う様な代物ではない。
 ここに提示する蝴蝶装は、文献に基づき小生が見よう見まねで復元を試みた蝴蝶装で、元来は冊子本であった『瑶池金母解脱定慧寶經』と『中壇元帥降魔真經』との合冊本を、蝴蝶装仕立てに改装した真っ赤な偽物、つまり贋物の蝴蝶装である。

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