〜通書(暦書)〜

零話6

 中国の大衆社会にあっては、何事につけ吉凶を占い吉日を選んで行動するが、その指標となるのが通書(暦書)であり、今でも営々として出版されている。極めて簡略的に言えば日本の高島易の運勢暦のようなものではあるが、中国通書の内容はそれよりも遙かに幅が廣く、単に択日だけの内容に止まらず、ありとあらゆる日用雑貨常識的なものまでも含んでおり、所謂カレンダーではなくアルマナックである。その構成は、該当年度の365日の下に暦注を記した具注欄と該当年月の星神表・天宮図を基本的要素として、孝道・婦道の話、種々の択吉の占法、日常生活に拘わる便利情報等々が刷り込まれ、丁度カレンダーとタウン情報誌をミックスしたようなものであり、基本的要素部分以外の個々の内容は、発行年度や発行場所に因って一様ではなく、当時の世相を伺い知ることが出来る貴重な風俗資料である。清朝以後のものに関しては、大概見開きに「春牛」と「芒神」とが印刷されており、表紙は赤色地に吉祥図が描かれ、縦24cm横13cmの大きさで、厚いものは4cm以上に及び、その背に「童叟無欺」とか「満載栄歸」等と印刷されている。現在小生の手元には下記に提示したもの以外に、1950年(永経堂、香港)・1954年(泰生隆、香港)・1959年(?、香港)・1960年(麒麟閣、香港・五経堂、香港)・1963年(麒麟閣、香港)の六種類が有り、見比べてみると各々特徴が有りなかなか面白い。
 ここに提示する通書二点は、上段が十六葉に渉って「粤海関新定税則」を刷り込んだ多文堂(広州)の光緒23年大清通書であり、下段が二葉に渉って万国旗を刷り込んだ廣文樓(広州)の民国20年通書である。

[目次に戻る]