〜写真本〜

零話12

 写真本とは専門的な用語ではなく、基本的には景印本の一種であるが、現在の如き極めて精巧な装丁からして底本とそっくりな景印本ではなく、写真技術が印刷に使用されだした今世紀初頭頃には、写真を台紙に焼き付けたり、焼き付けた紙を台紙に張り付けたりした本が有る。一見して写真と分かるこれらの本は、専門的には景印本であるが、小生は今の景印本と区別するために、極めて個人的に且つ便宜的に写真本と呼んでいる。
 ここに提示する写真本は、日本の内閣文庫に所蔵されている元版『三国志平話』を、一九二六年に塩谷温氏が写真にとって台紙に焼き付け、変形糸綴じ装丁で出版されたものである。

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