〜輯 本〜

駄言1

  輯本とは、既に散逸してしまった書籍に関して、書々に散見するそれらの断片を丹念に拾い集め、可能な限り復元しようと試みた本のことである。清朝考証学の隆盛と共に逸書蒐集復元の作業も盛んに行われ出し、その成果が『黄氏逸書考』や『玉函山房輯逸書』であることは他言を要すまい。しかし、彼等の蒐集作業が必ずしも十全でなかったことは、現在でも研究者に因って蒐集作業が継続されていることが明白に示しており、例えば、清朝の学者を動員して『永楽大典』から復元させた『東観漢記』(四庫全書本及び聚珍版叢書本)を不備として、更に蒐集し直した呉樹平氏の『東観漢記校注』等がその代表である。
   
 ここに提示する輯本は、左側が張鵬一が輯めて民国11年に刊行した関隴叢書本の『魏略輯本』であり、右側が陳氏慎初堂本を景印した洪頤センの『經典集林』である。

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