〜詞曲類〜

閑話12

 詞曲類とは、大まかに言えば一種の民間俗曲歌謡で、胡楽を初めとした民間流行の楽曲に合わせて唄う歌が詞で、それらの楽曲や詞を一類のものとして分類したものである。故にそれらは更に詞選部とか曲選部とかに細分されるが、その出発が民間俗曲歌謡であったため、『四庫全書総目提要』の詞曲類には「詞曲二体は文章技芸の間に在り、厥の品は頗る卑しく、作者も貴からず、云々」と記されている。しかし、大衆楽曲歌謡史や戯曲史を考える上に於て、その代表格たる一連の元曲関係を想起するまでも無く、それ以外にも貴重な資料を多数含み、例えば、詞選部に属する後蜀の趙崇祚の『花闖W』は、『四部叢刊』集部にも採取されており、また清初の大学者朱彝尊は、同じく詞選部に属する『詞綜』を編集している。
 ここに提示する詞曲類は、明末を代表する文人の馮夢龍が編集した、曲選部に属する『山歌』の、民國24年傅經堂藏版排印本であるが、これは当時の蘇州語で唄われていた通俗民間歌謡で、男女の愛情にしろ、人情の機微にしろ、可成り大胆に明け透けに歌われており、明末蘇州地方の風俗を伺い知る貴重な資料である。

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