學院與大學之中國學的遺産

 『大漢和辭典』と『中国語大辞典』は、共に大東文化學院と大東文化大學との、中國學に關する基礎的な知的遺産の一つ、と言っても過言では無いと思います。大修館書店出版・諸橋轍次著『大漢和辭典』の編纂には、昭和七〜九年前後の學院在學生であった大島宇一・原田種成・石川梅次郎・鵜川茂・石塚謙三・池谷忠寛・佐々木新二郎等多數の諸先輩が、雑司ヶ谷の諸橋先生の仕事部屋「遠人村舎」に随時參集して、親字や熟語の収集整理に參畫されており、亦た大東文化大學中國語大辞典編纂室編『中国語大辞典』は、大東文化大學設立六十周年記念事業の一環として、大東の中國語關係者が総力を擧げ、十年前後の歳月を費やして編纂したものです。古典中國(漢文、特に宋代以前)の言葉を理解する爲の『大漢和辭典』、現代中國(特に明・清以後)の言葉を理解する爲の『中国語大辞典』、この二種類の辭典は、文獻上に於て中國を理解しようとした時、座右に常置すべき基本的工具書であると愚考致します。

 然りと雖も、現在ではこれ等に代わる可き大部な『漢語大字典』『漢語大詞典』等の辞書類が、中國で陸續として作られており、其れは學問の發達に伴う必然的な歸結でもあります。ただ學問の發達は發達として喜びつつも、諸先輩達の偉業は偉業として素直に評価し、受け繼ぎ傳えて行きたいものだと愚考致します。

   平成20年暮春

                            於黄虎洞

*上記文章は、『大東文化大学五十年史』『同七十年史』等、既に公開されている大學の公的資料の記載内容と筆者の若干の感慨とに基づき、簡便に纏めたものである。

【文責、中林】

 

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