消費税の増税について

はじめに 

第1章 消費税の意義 

(1)消費税とは

(2)消費税の効果 

(3)中間申告と確定申告

第2章 消費税を引き上げる背景

(1)少子高齢化による社会保障の財源確保

(2)国民年金の財源としての消費税

(3)小泉総理大臣と政界の発言

(4)橋本内閣による消費税率引き上げ

第3章 消費税引き上げ後の問題

(1)消費税引き上げの問題点

(2)消費税引き上げが経済に与えた影響

おわりに

はじめに

1988年に消費税は税率3%で導入されて1997年に5%に引き上げられた。現在政府、与党内や経済界で消費税引き上げについての議論が高まり始めている。消費税は、現在の経済事情や、将来の財源確保のためには、引き上げる事もやむを得ないという主張がある一方で、低所得者などには負担が増えるといった理由から反対もある。

消費税は、国民にとっては一番身近な税である。そこで消費税の意義から考えて、現在の政財界の動きと消費税が引き上げられた場合の社会に与える影響を考える。

第1章 消費税の意義 

(1)消費税とは

消費税は特定の物品やサービスに課税する個別間接税とは異なり、消費に広く公平に広く公平に負担を求める間接税です。私たちが物を買ったりサービスの提供を受ければ通常であればその支払う金額の中に消費税が含まれている。このように、消費税は、品物やサービスの代金の中に含まれているので、それを支払った私たちが税金を支払った事になるから、「間接税」というわけである。

一方、法人税や所得税などは、税金を直接負担する人にかけるので、「直接税」というが、これらは自ら申告・納付することになるから、税金を負担する者と申告・納付する者が同じである。

これに対して、間接税である消費税は、税金を負担する者とその税金を申告・納付する者が違う。税金を負担する者は、物を買ったり、あるいはサービスの提供を受けた者であるが、申告・納付する者は、その税金を価格の中に含めて預かった業者である。もっとも、消費者などから消費税をあずかる業者でも、売るための商品を仕入れたり、経費を支払ったり、固定資産を購入したりする際に、その価格の中に消費税が含まれていることになるから、一方で消費税を負担する事になる。

なお、日本の消費税は、EU諸国の付加価値税と同様に、消費者と小売業者というような単段階で課されるものではなく、多段階で課される間接税である。メーカーは原材料業者から材料を仕入れ、これを加工して卸売業者に売り、卸売業者は小売業者にその製品を売り、さらには、小売業者は仕入れた商品を消費者に売るといった流通経路の中で全ての消費税が課されるものである。したがって原則としては原材料業者、製造業者、小売業者のすべてが売上に係る消費税額から仕入れ・経費などに係る消費税額を控除した残額を申告・納付する事になる。

なお消費税は取引の前段階で課されたものを控除する累積排除型のものであるので、各事業者は消費税を負担する事はない。結局流通過程における各事業者は、これらの者が販売する物品やサービスの価格に消費税を上乗せして転嫁していくことになるから、最終的な消費税の負担者は消費者という事になる。

わが国の消費税率は、消費税法29条の規定により4%の単一税率である。また、消費税のほかに地方消費税が別途消費税額の25%(消費税率に換算して1%)課されることから、これらを合わせた税率は5%となります。

参考

消費税法4条
国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
2 保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。
消費税法第5条 
事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。
2 外国貨物を保税地域から引き取る者は、課税貨物につき、この法律により、消費税を納める義務がある。
納付税額の計算は、課税標準額に関する消費税額で算定できる。計算は、
・税込み売上高×105分の100=課税標準額(1000円未満単数切捨て)
・	課税標準額×4%=課税標準額に対する消費税額
もっとも税抜本体価格または税込価格と消費税額等を区分して領収している等一定の条件を満たしている場合には、経過措置として次の算式に示すような計算が認められている。

・(領収するごとに税抜本体価格
又は税込価格を区分した1円未満×80%=(課税標準額に対する消
の端数を処理した後の消費税額など      費税額)
の課税期間中の合計額)

消費税の納付税額の計算は、売上に対する税額から、仕入れに含まれる税額を差し引いて計算します。
原則計算には、個別対応方式と一括比例配分方式がある。個別対応方式を採用する場合には、課税仕入れの区分経理が必要となる。
T課税機関の課税売上高×4%−課税機関の課税仕入高×4%=消費税の納税額
U消費税の納税額×25%=地方消費税の納税額
VT+U=納めるべき消費税額

次に課税対象の区分は、消費税の取り扱いで重要な事は、消費税の課税対象を明確にする事であるが、基本的には、国内取引と輸入取引が課税対象となる。国内取引は、国内において行った課税資産の譲渡等」で輸入取引は、保税地域から引き取られる外国貨物である。もっとも、国内取引でも、例えば、株主配当金など、もともと課税対象外取引に該当するものもある。

課税対象となる国内取引と輸入取引は、それぞれ課税分と非課税分に区分される。さらに、国内取引の課税分は、5%(地方消費税も含む。)課税分と免税(0%課税)分になる輸出及び輸出類似取引とに区分される。

(2)消費税の効果 

消費の変化=所得(減少)効果+価格(上昇)効果

現代は消費の低迷によって景気が落ち込んでいるといわれているが、現在の状況で消費税を上げることは、消費者の消費意欲を必要以上に減退させることになりかねない。消費税が課せられると物価があがるだけでなく、所得も減ったように感じられる。例えば、20%の消費税が課せられると、500万分の所得では400万円分しか消費できない。消費税は、物価の上昇+所得の減少になる。消費税が課せられると物価の上昇+実質所得の減少という2重の効果によって、消費者は購買力をより多く失ったように感じる事になる。

(3)中間申告と確定申告

中間申告とは、原則として課税事業者は、直前の課税期間の確定消費税額の年換算額の区分に応じて規定により所定の事項を記載した中間申告書を所轄税務署長にていしゅつしなければならない。 仮決算をした場合の中間申告は、原則によらず、その中間申告対象期間を一課税期間とみなして仮決算による実額計算をして中間申告を行う事も認められている。

また、中間申告書の提出期限までの提出がない場合においても、その提出期限に原則による中間申告書の提出があったものとされる。

確定申告とは、国内取引において事業主は、課税期間ごとに課税期間の終了後2ヶ月以内に、所轄税務局長に所定の事項を記載した確定申告書を提出しなければならない。ただし、国内における課税資産の譲渡等がなく、かつ、仕入れに係る消費税額等の控除をした残額がない課税期間においては確定申告書の提出義務はない。もっとも、消費税の額が100円未満となったため、その全額が切り捨てられた場合でも、その課税期間に課税資産の譲渡等があれば、確定申告書の提出義務はあることに注意しなければならない。

第2章 消費税を引き上げる背景

(1)少子高齢化による社会保障の財源確保

現在日本では本格的な少子高齢化社会の到来を控え、社会保障費の増大という問題に直面している。この増大する社会保障日を賄う方法として現在の消費税を目的税化すべきという議論がある。社会保障費の安定した財源確保が急務となっている。そこで消費税がその財源となりうるのか検証する。社会保障とはそもそも何を目的にしているのかを考える。社会保障の目的のうち代表的なものに生活の保障と所得の再分配の二つがある。生活の保障とは、最低生活の保障、つまり貧困の救済や、現在の生活レベルを保持するための援助などである。

次に所得の再分配とは、低所得者を助けることにより、高所得者との格差を少なくする事で、市場メカニズムの欠点を補うという意義がある。では消費税を社会保障の財源に充てるということの意味は何かを考える。いくつかの理由はあるが、最大の理由は「受益と負担の明確化」をはかるということである。受益とは社会保障などの行政サービスのことで、負担とは国に支払う税金の事である。つまり国民は国や自治体から一定のサービスを税金という形で買っているということになる。こうなると消費税を目的化することに対して抵抗が感じにくくなる。しかし、問題は、消費税には低所得者ほど消費税の負担がより大きくなるという逆進性があるという事だ。このことは、消費税の引き上げが社会保障の目的の一つである所得の再分配とは正反対の結果を生む。だが高所得者ほど消費額が大きいわけであるから、それによる税負担も大きくなる。

低所得者と高所得者が収入に対して同じ割合で消費支出があった場合、収入に対する消費税負担比率は等しくなり累進的でもなく逆進的でもない。しかもその税収は社会保障のために使われるので、低所得者のもとにはより多く還元されるのである。また、諸外国で採用されているように、例えば食料品などの生活必需品を非課税にするなど複数税率を採用する事も考えられる。

2003年政府税制調査会は総会で、将来の社会保障制度の維持に必要な税制改革の方向を示す中期答申「少子・高齢化社会における税制のあり方」を決め小泉総理大臣に提出した。内容は社会保障費の財源を確保するため、個人の所得課税の強化や消費税2けたへの引き上げを打ち出し、全体的に税負担の強化を求めるものである。答申は公的年金控除など、高齢者に一律適用してきた優遇税制について「高齢者を年齢だけで一律に優遇する税制のゆがみを見直すことが重要」と指摘、世代間の税負担の不公平感をなくすことに主眼を置いた。高齢者以外でも、年金保険や雇用保険などの社会保険料の控除縮小を打ち出した。夫を亡くした妻が受け取る遺族年金と、職を失った人に支給される失業給付についても、これまでの一律非課税を課税対象に改めるように求めた。社会保険料については、保険料の支払いと受け取りの両段階で課税強化を求めることになる。サラリーマンの給与所得控除についても、必要な経費を厳格に見直すことで縮小の方向性を示した。

(2)国民年金の財源としての消費税

社会保障の中でも現在最も深刻な問題を抱えているのは国民年金である。

1986年4月施行の国民年金法改正により、被用者、自営業者を問わずに全国民が加入し、老齢・障害・遺族の書く基礎年金を支給する国民年金制度が確立された。年金の財源は保険料収入が中心だが20歳以上の全国民が加入する国民年金については現在は国が3分1を負担している。保険料引き上げ抑制のために2000年の制度改正で、政府は2004年までに2分の1を引き上げる事を公約した。しかしこれは、抜本的な改善にならないという見方が多い。現在の国民年金における最大の問題は空洞化問題である。国民年金の第一号被保険者(自営業者など)については、保険料の滞納や制度未加入が多いが、これはその定額保険料が低所得者にとっては負担が重く、しかも事実上自主納付であるためであるとされている。

現在、国民年金保険料の未納率が、2002年で前年比8.1ポイント悪化の37.2%超えるという実態が公表されたが、未納率が加速度的に悪化している事は、制度に対する国民の理解と信頼が著しく損なわれている事に他ならない。三菱総合研究所は、財政再建を進めるためには消費税率の引き上げが最も有効だとする試算結果を発表した。試算では、消費税率を段階的に2007年度に8%、2010年度に10%へ引き上げた場合、政府が目標とする「2010年代初頭のプライマリー・バランス(財政の基礎的収支)の黒字化」をほぼ達成できるとしている。名目GDPに対する財政赤字の比率も、今年度の7.3%から2010年度には3.8%に縮まる。一方、景気回復を優先するために消費税率の引き上げを見送っても、長期金利が安定していれば財政赤字は改善する。しかし、長期金利が2008年度に4.8%まで上昇した場合は、国債費の負担増が税収の伸びを上回り、財政赤字の比率は8%に悪化する。

同研究所では「税収増を図るより、消費税率引き上げで財政改善を急ぐべきだ」と指摘している。現代の国民年金制度においては各人の保険料と給付額との間には差があるが、保険料の納付により、給付を受ける権利が根拠として与えられるという考え方の下で一定期間以上、制度に加入し保険料を納めなければ基本的に給付を受けることができず、また保険料の給付期間に応じて給付額も増減する事とされている。このことから消費税を財源とすると考えた場合、基礎年金給付と消費の間には受益と負担の対応関係がなりたたず、消費の量に応じた基礎年金給付を行うことができないといった問題点がある。

また多くの主要先進国においては、年金給付などについては社会保険方式の下で事業主負担を求めているが、年金給付額を全て消費税で賄う税方式とする場合には事業主負担の保険料を家計の消費負担に置き換えるかどうかの問題が生じる。また、基礎年金を「税方式化」へ移行するとの考えでは、消費税率をあげることである程度は、老年世代への負担を増加させる事ができる。しかし、その効果は消費税引き上げに伴う物価スライド制により相殺されてしまう。年金改革という観点だけで考えれば、この問題は物価スライド制を廃止し、加えて現在年金を給付されている世代の給付額を削減すればよい。しかしそれは政治的に非常に困難であろうと予測される。

(3)小泉総理大臣と政界の発言

財界や政府与党の自民党、公明党、さらに野党の民主党も年金のために、消費税増税は避けられないと強調している。しかし、年金のためとはいえ消費税増税には60%から70%の人が所得の少ない人や所得のない人からも取り立てる消費税である。2003年に入って財界団体は消費税の二桁税率と法人税率の引き下げをいっせいに要求し始めました。

政府税制調査会答申も、@消費税の二桁税率化A年金や失業給付への課税B法人税の引き下げ、を提言している。2003年の総選挙では、自民党と民主党が消費税増税を「政権公約」で公然と打ち出した。2002年末には自民党と公明党が2007年度をめどに消費税を含む「抜本的税制改革」で合意している。民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)で、年金改革の財源として消費税の引き上げの必要性を指摘する方向で検討に入った。民主党案は、基礎年金の財源を全額税で賄う「税方式」が基本で、納めた保険料額に応じて年金額が決まる「所得比例年金」の創設を提案している。厚生労働省の吉武民樹年金局長は4月7日の衆院厚生労働委員会で、民主党の年金法案対策に基づき新たに必要となる消費税率について「6%程度になる」とのしさんを明らかにした。民主党の年金改革案の中で、最低保障年金の財源は3%消費税で賄うと説明している。また、所得比例分は一定の割合とすることにより、自営業者は労使折半とならないため、全額自己負担となる。その負担が、現在の8.2倍になるという試算が出された。

小泉総理大臣の発言

財界も自民党、公明党や民主党も2007年度から消費税増税を実施するという点では、足並みを揃えているといえる。会見で細田長官は懇談会での議論について「21世紀という長い期間を考えた場合には、こういう手当て(消費税引き上げ)が必要であるという議論を提起する事はありえる」と述べた。その上で「衆参両院の与野党協議も引き上げるべきだとなり、懇談会でも合意されるのであれば(首相任期中に引き上げ方針の決定は)あり得る」と指摘した。

(4)橋本内閣による消費税率引き上げ

1997年、橋本内閣により行政改革、社会保障恋増改革など6つの改革が行われた。そのうち財政構造改革では、消費税を3%から5%に引き上げる増税が実施された。他に、公共投資基本計画などあらゆる長期計画の大幅な縮減、1999年度予算における一般歳出の対1997度比マイナスなどが計画された。1994年11月26日、税制改革法の成立により、この消費税率の引き上げ案(3%から4%に引き上げる、地方消費税1%の創設によりあわせた負担は5%になる)が具体的に示され、1996年6月21日に正式決定された。これは地方活性化や福祉の充実のための財源を確保すると共に、働き盛りの勤労世代の負担を軽減し、社会を構成する国民全体で支えあっていく税制を実現する事を目的としている。

ところがこの消費税率引き上げによって個人消費が低迷し、日本経済を不況の方向に向かわせたという見解が存在している。橋本内閣の支持率に注目して日本経済新聞社が実施した内閣支持率調査の推移を示したものをみると1996年6月21日に消費税率引き上げが決定したが、その後の支持率を見ると、低下している箇所が2箇所ある。まず一つ目は、1997年1月から1997年3月にかけてである。この期間の支持率が下がったのは、1月29日に明らかになったオレンジ共済事件によるものだ。この事件は、3月の国会でも取り上げられた。また、3月は再びオレンジ共済事件についての報道がされた。そして二つ目は、1997年9月から1997年12月にかけてである。この期間支持率が下がったのは、山一証券、北海道拓殖銀行など金融機関の破綻が相次ぎ、また、ロッキード事件の被告である佐藤孝行氏が閣僚に任命された事によるものである。一方、実際に消費税率引き上げが行われた1997年4月には内閣支持率はむしろ上昇しており、国民が消費税率引き上げに強く反発していたと考えられる。

第3章 消費税引き上げ後の問題

(1)消費税引き上げの問題点

基礎年金の財源を年金保険料から消費税に変えるということは、基礎年金制度を「若い世代による高齢世代の扶養」の制度から、「国民全体による高齢者の扶養」の制度に変えることを意味する。保険料の負担は逃れることができても、消費税の負担を回避する事は困難である。つまり現在保険料の免除を受けている生活保護受給者など低所得者も消費税を負担しているので、年金の費用を負担するようになる。また、年金受給者は現在原則として年金保険料を負担していないが、消費税は負担している。この保険料を収めずに、その恩恵にあずかることは不可能だ。

実効可能性などが大きな問題になる。だが逆進性については先述のように必ずしも消費税がそういった性質を持っているとはいえないし、複数税率を導入する事によって低所得者への過度の負担がかからないようにすることは可能なはずである。国民の約6割が今後さらなる消費税率の引き上げもやむなしと考えているという結果がでている。

では実際に消費税によって年金の財源を賄うとすると、いったいどれほどの税率まで引き上げる事が必要かを考える。2025年まで2%の経済成長率で経済が拡大し消費税収入も経済成長率と同じだけ伸びていくと仮定すると、現在の国と地方を合わせた消費税収が約10兆円なので、2025年には現行5%税率では消費税収入は約16兆円になる。また名目GDPは、現在が510兆という額なのに対し2025年は、808兆となる。これらの数字から社会保障の財源不足額を埋めるには、消費税率は15%にならないという結果になる。なお年金だけに話を限定しなければ、内閣府の試算では、現在と将来の財政状況を考慮すると、2005年から追加負担を行う場合、必要な追加負担は消費税率で23%に相当する。これらの試算にはさまざまな前提が置かれているので、実際に必要となる消費税率の引き上げ幅もその前提が変われば変わってくる。しかし、少なくとも2桁の税率が必要となる事は間違いない。多くの国の税率が、10%以上である。日本より少ない税率はシンガポールだけである。このように日本の消費税率の水準は、国際的に見てかなり低い。

消費者が支払った消費税のうち、国庫に納入されずに業者の手元に残ってしまうという益税の問題がある。この益税問題は、現行消費税の構造的欠陥からもたらされている。消費税導入の狙いの一つは、ドゴーサンピンによる業種間の課税の不公平解消だといわれた。ドゴーサンピンとは、給付所得者はその所得の10割を、自営業者は5割を、農家は3割を、そして政治家は1割しか補足されないという意味である。所得税補足を免れている人々も、消費税は払うので不公平是正に役立つのであるが、このことによってむしろ、事業者と農家に消費税法による特別措置で益税という新たな優遇をあたえ、不公平を拡大する結果となってしまったのである。その特例措置の一つの事業者免税点制度とは、年売上3000万以下の業者を免税業者としたことにより、ほとんどの農家と総事業主の6割強が免税となったのである。そのことでなぜ免税が発生するかというと、免税業者の小売価格は課税業者よりも安いはずにも関わらず、実際には同じ価格で販売している事のほうが多いのである。この場合、付加価値に税額を乗じただけの益税が発生し、そのままその免税業者の収入になっているのである。消費税に関する特例措置は、微税コストの最小化という視点からすればある程度やむを得ない面もある。しかし、消費税を負担している消費者からすれば、自分が納めた消費者が国庫に入らず、中小事業者の利益となってしまえば、納税意識も向上せず租税に対する不信感だけが高まっている。

(2)消費税引き上げが経済に与えた影響

最近15年間での対前年比でみた実質民間消費支出と実質国内総生産を示したものをみると、1997年に消費税率が5%へ引き上げられた後に消費支出が大きく落ち込んだ事がわかる。しかし、これは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動によるものと考えられる。次に、1998年には、消費の落ち込みと同時に景気も悪化して、マイナス成長を記録した事も読み取れる。消費税率引き上げ分は消費価格に転嫁され、家計消費に与える影響を与える。実際の消費物価の上昇を調べると、消費税が導入された1989年には2.4%、税率が5%に引き上げられた1997年には1.8%の物価上昇が生じている。各家計は、ある一時点の価格体系及び予算制約に基づいて、効用を最大化するように消費を決定するものと考えられる。所得税の減税は予算制約における可処分所得を増大させる事で消費を増大させる原因となり、消費税率引き上げは実質可処分所得を減少させることで消費を減少させる原因となる。しかし、現在の標準的な消費理論では、家計の消費は、一時的な可処分所得の変化よりもむしろライフサイクルを通じた可処分所得に依存すると考えられる。つまり、1994年に諸費税率の引き上げが示された時点で、国民のライフサイクルを通じた可処分所得は既に減少しており、その時点から消費税の影響は存在していたと考えられる。したがって1998年の消費の落ち込み、それに伴う景気の悪化も、消費税率引き上げが原因であると考えがたい

おわりに

現在の少子高齢化の問題から考えても消費税を引き上げる事は、これからもっと必要となっていくと思う。政府税制調査会の中期答申は、中長期の課題として消費税率の「2桁」引き上げを明記した。2007年以降に10%への引き上げが想定されている。ただ、低所得者に配慮して日々の生活に必要な食料品などに対する税率は低く抑える「軽減税率」の採用を求めている。主要国で複数税率を採用している国のうち、フランスが標準税率19.6%で軽減税率は5.5%、ドイツはそれぞれ16%と7%。日本でも食料品などの税率を5%に据え置く方向で軽減税率が導入される可能性がある。国民がうける痛みを考えた上でのこれからの消費税に関する議論が必要とされている。

消費税法の解釈と実務 大蔵財務協会 税理士 三浦道隆著
消費税の常識[第7版] 税務経理協会 小池敏範著
消費税入門の入門 税務研究会出版局  辻 敢・本田望・斉藤雅俊 共著
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw04041101.htm
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/54/zeikin003.htm