アパレル業界このままで生き残れるか?!

大東文化大学
法学部 政治学科4年
学籍番号 01142259
佐野桃子

はじめに

1現在のアパレル業界

2SPAとは

1)SPAと非SPA

2)日本SPA企業10社の戦略

3SPA企業が及ぼす影響

4アパレル業界に必要だと思う戦略

1)高齢化はどうなっているか

2)高齢市場とファッション

おわりに

はじめに

現在のアパレル業界はSPA戦略中心だが、それで今後も業績UP生き残れるのだろうか。

1 現在のアパレル業界

2003年度上位100社中、51社減収43社増収。2004年度上位10社中、4社増収6社減収。上位10社業績が上がっている企業はほとんどがSPA企業である。

特に今年は市況低迷に加え、猛暑や台風の影響などで百貨店婦人服が苦戦した。又アパレル企業の倒産は多く、民事再生法の適用が増えている。

2 SPAとは?

GAP社が自社形態を「Speciality Store Retailer Of Private Lavel Apparel」と定義したことから業界に定着。日本では「製造小売」と意訳されている。

SPAとは大衆をターゲットに大量生産、大量販売による低価格戦略をいう。その意味においてこの業態を「製造小売」とも言われてきた。安さが一番のポイントになっていることから出来るだけ耐久性のある商品、高品質な商品を提供する事に意義がある。ゆえにデザイン性よりも品質にウエイトが置かれ、その基本的戦略として垂直的な生産体制の構築や物流機能の充実が求められてきた。プライベートブランドに合う生地を作るため、素材メーカー(テキスタイル)共同で開発し、製品に仕上げそれを効率的な物流システムで店頭に早く陳列するという方法である。他方販売は、「POS」による情報の収集それに伴ってネットワーク化により、必要な時期に必要な量の商品を販売する。シーズンオフに在庫品となるものは、アウトレットで処分する。リスクは自社で負うという、買い取方式で収益性を高める。

1)SPAと非SPA

ここではSPAと非SPAの違いにふれてみる。

SPAは
  1. 全て買取で、リスクチャレンジャーである。価格決定も全て自社で行う。
  2. 情報の共有化により、どのスタイルのどの商品が一日にどの時間帯にどれだけ売れているのか。さらにどの商品がどういう顧客になぜ売れたのか、という顧客情報を正確に低コストで入手できる。加えて売れ筋商品の追加生産や欠品、在庫状況、商品の回転率が明確につかめるのでロスを最小限にとどめることができる。
  3. SPAのマーチャンダイジングは頭の先からつま先までライフスタイルによる商品提案である。
  4. 自社の店舗を持っている。
  5. 垂直的なマーケティングシステムによって、形成されている企業形態でSCMとも呼ばれている。
非SPAは
  1. 百貨店、スーパーの取引が主体である為委託販売が多い。委託販売は、1年に2〜4回の展示会を開く。その後各小売からの発注量に元づき商品をまとめて生産し、それを売って在庫を減らしていく。しかしいったんアパレルが商品を納めたにも関わらず、小売が売れ残り品を返品する慣例がまかり通ってきた。返品しないまでもバーゲンセールの為の割引金額分を負担するよう要求されることは頻繁にあった。取引は不透明で、無駄なコストを納入価格に上乗せせざるを得ない状況になる。
  2. 多段階流通により利益率が少ない。多段階流通とは、例えば綿花や羊毛を輸入し紡績に売り、そこで糸にしたものを再び買って織物を作り、染めたりするがこれらは商社を介して売り買いする。その後アパレルメーカーや縫製工場に売り、小売へと販売される。
  3. 洋服だけで、単品ものを企画・生産・販売する為ストーリー性がない。
  4. 取引先である大型小売業の倒産があるともろに影響を受ける。婦人・子供服卸の場合でも大型店の倒産があると、その連鎖で3〜40社は余波を受けて倒産してしまう。

2)日本SPA企業の戦略

上位10社の戦略をまとめてみた結果以下のようになった。

商社と提携し、独自の情報システムで店頭在庫と売上げ情報を共有。欠品と過剰在庫をなくす。個別の取引に契約書や覚書を交わし、全量を買い取る。それにより、仕入れ価格や納品の面で交渉力が高まる。

売れた商品を迅速に追加生産する。生産から販売の現場まで、リアルタイムに結んだ情報システムによる一貫生産システムを確立。

通常はメーカー商社・・・を経て問屋、卸から小売へ商品が流れる。しかし提携会社(三井物産・三菱商事・伊藤忠・丸紅)が主体となって完全に卸、問屋を中抜きにした流通ルートを組み立て又サプライチェーン(SCM)を確立している。

ライフスタイルが提案できるメガストアーの開発。店舗独自の空間とビジュアル開発により、エンターティメント性の高いストアー作りを目指す。

コンビニ的な低価格志向のミニショップ開発。主に化粧品・衣料品・文具品を扱う。価格は100円から1000円までとして3000品取り扱う。

1つの会社を5つの戦略事業部単位に分け(SBU)、それぞれ独立採算を目指す疑似カンパニー(社内分社化)を導入。

商品価格、商品投入量、追加生産店舗イメージを構築まで権限を持ったブランドごとのグループ長=事業部得責任者を立てる。これにより顧客の要望に臨機応変に対応できる。

人材登用で女性を活用。お客のニーズに素早く対応できるのは、店舗経験者という考えから責任と権限を与える。

直営店を単品(服)から、トータルアイテムの揃うライフスタイル売り場へと転換する。

営業という職制を撤廃し、代わりに1人当たり5〜10店舗を管理するブロック長制の導入。ブロック長は店舗支援に集中し、デスクワークから解放。店に密着した仕事に集中させSPA志向を高める。

素材メーカー(東レ・帝人・東洋紡)と結びつきを強め、糸の開発から手がける。素材メーカー側は、最新トレンドが手に入り、商品開発、手がけた素材を他社に販売することも可能。会社側は必要な量を確保でき、工場への投入が通常より20日以上早く行うことが出来る。

デザイナーとコラボしたSPAブランドを作る。

商社とのコラボレーションによる新ブランドを立ち上げる。

M&Aによる業容拡大により、短期間のうちに規模拡大が図れる。

販売と生産における機会ロスと在庫ロスの削減を目的に、素材開発・生産から店頭への物流まで商品に関わるすべての流れを店頭の動きと同期化する体制を構築するため、一体的なネットワークを構築するパートナー集団を作る。

1週間の直営店頭での売れ行きに合わせて、その次の週の商品発注量を毎週各商品事に修正し続ける。それによって総在庫量をコントロールし、発注業務の精度、店頭での販売量と仕入発注量のバランスを最適にコントロールする。

卸販売力と他社の商品企画力とのコラボレーションし、お互いの強みを活かして構築した卸の新たなビジネスモデル。卸販売の仕組みを活用して自社にはないテイストを持った他社のブランドを販売していくことによって、専門店及び顧客の多様化するニーズへの対応力を強化する。

3 SPA企業が及ぼす影響

1.問屋・卸

問屋・卸は「SPA」やネットビジネスに代表されるような業態の変化、商流通の変化、素材メーカーや商社の中抜きにより必要性がなくなってきてしまっている。メーカー・商社・小売との直接取引が多くなればなるほど、問屋・卸は圧迫される。他にも卸・問屋の縮小要因としては、輸入の大幅な増加がある。各段階の繊維製品の出荷額や卸売額を縮小させ、輸入品はアジアからの低価格品が中心であるために、これらと競争する為卸の価格も低下せざるを得ない状況になった。国際化、SCMを推進した情報システム化、生産基地の海外の移行により流通経路は更に縮小され、簡素化されていくだろう。今後も問屋・卸の縮小は続くものと思われる。

2.百貨店

百貨店は、SPA企業によりただ場所を貸しているだけになっている。商品は百貨店の売場に並んでいるが、入れ替えや追加は全てアパレル会社が判断する。好成績を占めるSPA企業の多くは、百貨店と取引する場合商品が売れてから一定のマージンを小売に収める消化仕入れがほとんどである。これが理由で経営基盤を揺るがされているわけではない。企業に厳しい取引条件を呑まされていることが大きな打撃になった。例を挙げると、卸売りの場合の掛け率は条件によって異なるが、たいていは販売価格の60〜70%。定価10万のスーツを百貨店が仕入れた場合、6〜7万を企業に支払い3〜4万が百貨店の取り分になる。これが今は10万の商品が売れてもたった1万円しか残らない。百貨店の取り分は減る一方である。アパレルの悲願が百貨店だった時代は遠い昔になった。それにより百貨店の社員の活躍の場が喪失してしまった。インショップの増加で社員の活躍の場を自ら失ったのである。自ら販売し、顧客を作っていくという役割はないに等しい。

そして百貨店は長期低迷が続いている。日本百貨店協会に加盟する約300社の総売上高は1998年度に9兆1773億だったものが、02年度には8兆3447億円と10%弱の減少となった。そごうの倒産、地方百貨店の相次ぐ倒産、廃業などから加速は進んでいる。売場面積、店舗数は拡大しているが売上高は毎年前年を割っているのが現状だ。小売市場における百貨店の売上高は、99年6,7に後退し進んでいる。一方過剰人員の効率化によりの効率化などリストラ対策は続き、従業員1人当たりの販売高は93年度からうなぎ登りに増加している。1人当たり6206万円だった販売高は、02年には8342万になった。しかし、リストラ効果は限界に近い。

アパレル会社商品に頼っている状況に甘んじていては他の百貨店と同質してしまうとの危機から、独自のSPAブランドを構築している百貨店もある。他に対策としては3つある。1大型改装。改装への投資額と売上高の伸びは、相関関係にある。例えば三越本店(東京・日本橋)は15臆円の投資で売上高7,6%増。高島屋新宿店(東京)は14億円の投資で2,2%増、大丸心斎橋店(大阪)は12臆円の投資で5,6%増という具合である。この改装は個別店だけでなく、各百貨店とも東西の主要点で進めており、通期の改装計画は三越175億(前年比54%増)、大丸125億(同65%増)、高島屋100臆円(同43%増)という大がかりなものだ。2高級志向。この大型改装で広げた店舗で展開する商品は、高級品が中心である。衣料品や靴、装飾品など「粗利益率の高い身の回り品」の売場が増えている。これは明らかに、ユニクロ現象の対極にある消費者の高級志向の流れを百貨店がとらえ始めた事を意味している。3都心回帰。百貨店の増収増益には、大都市人口の都心回帰が貢献している。人口の都心回帰には、高齢社会の到来、日本大都市の安全性、便利性という条件がある。これを活かし、都心で生活する女性になくてならないものとなったデパ地下などの充実がある。全国各地からオリジナル商品を集め魅力的な売場作りで都心の新たな顧客獲得、集客率増加に力を入れている。

4 アパレル業界に必要と思う戦略

私は現実になる日本の少子高齢化に、これからのアパレル業界は力を入れていかなければならないと強く感じた。特にSPA企業上位10社の戦略を見ていると、現在は収益を上げているが20年後30年後は黒字経営を続けられるか疑問だ。今から社会背景を捉え準備に取り掛からなくては厳しいと思う。

SPA企業上位10社のブランドに、40代以降を対象としたブランドがあるか独自に調査してみた。40代を対象としたブランド20。50代は7。ノンエッジブランドが1。団塊世代対象と書いてあったブランド1。HPから調査したのだがあくまで目安としてほしい。(この数はメンズ・レディースを含めた数である。)各企業のHPを調査し様々な事に気がついた。ひとつはブランドコンセプトが分かりづらく、参考になる服の写真が載っていないのが多い事。例えばターゲットとしている年齢やブランドイメージの年齢を表記している企業もあれば、「自立した女性」「働く女性」「都会的な女性」「新大人服」「意識の高い女性」「エレガントでエグゼクティブな女性」を対象と載せている企業や、詩を載せているのもあった。これで写真が載っていない状況でイメージできるだろうか。果たして情報を得たものの、それが消費者の購入につながるだろうかと疑問に感じた。年齢を載せればいいわけではない。あくまで何歳の対象の服を着るかを選ぶかは私たちだ。しかしHPやこの言葉などから、シニアではなくヤング世代対象なのがよく分かった。またあるブランドは25〜45までを対象としサイズは9号11号のみである。20歳の差と体形を意識したニーズに応えた服は可能なのかと感じた。50歳以降を対象とした服は7。もちろん男女合わせてだ。60歳以降はないに等しかった。この結果で高齢化を企業がどうとらえているかが分かるだろう。

1)高齢化はどうなっているか

現在日本は世界で最も早く、(欧米諸国の2倍のスピードで)高齢化が進んでいる。国民の平均年齢はすでに40歳を超え世界で最も高齢化の国となっている。厚生労働省の「国立社会保障・人口問題研究所」は、日本の長期的な人口動向を予測した「将来推計人口」を発表した。合計特殊出生率(女性1人が生涯に生む子供の数)は長期的に1,39止まりとの予測もあったが、03年には1,29まで落ち込んだ。日本の人口は2006年をピークに減少する見込みとなる。ちなみに出生率は2,01ないと、人口を保つ事が出来ないと考えられている。この結果、少子高齢化が従来予測より急ピッチで進むことになった。全人口に占める65歳以上の割合は、2000年で17,4%だったが、2025年には28,7%で4人に1人を超す。又人口構成から、65歳以下の市場は2020年までに約15%の市場縮小となる。一方、65歳以上の市場は2010年には1兆7179臆円(29%増)へ2020年には2兆430臆円(53%増)へと拡大する。現在高齢化市場は充分整備されておらず、今後確実に期待できると考えられる。

1)高齢化はどうなっているか

65歳以上世帯の被服・被服関連サービス・履物消費を基に推計すると、2000年では1兆3354億円という数字がでている。又現在元気な高齢者の存在に、市場の関心は少しずつ移ってきている。元気な高齢者は様々な呼ばれ方をされているが、「アクティブシニア」の呼称が定着しつつある。「アクティブシニア」とは60代を中心に、50〜75歳前後までの元気な新感覚を持った行動的な生活者の事である。アクティブシニア市場が注目される最大の要素は、シニアステージに団塊世代が間もなく到達し、量的に魅力のある市場を形成するからである。これから定年に達し、自由裁量時間を豊富に持つ元気な高齢者(アクティブシニア)の存在は認識され、消費市場として期待が高まってきている。団塊世代はこれまでも1200万人のボリュームで、社会的にも経済的にもその動きが多大な影響を及ぼしてきた。その団塊世代が数年後には、アクティブシニアとして新たなライフスタイルを形成しようとしている。具体的には団塊世代が60代を過ごす10年後2010年から2020年は、かなりの盛り上がりを見せ日本経済にも好影響を及ぼす市場を形成するはずである。しかしこの市場は期間限定である。その理由は、中心の担い手の世代特徴が強く反映するからである。対象が高齢層となることから、これまでのヤング層と異なり、いつまでもという感覚はなくなりあと何年という感覚がつきまとう。 期間限定市場には、当然メリットとデメリットが存在する。メリットは、祭りのように盛り上がりが期待できる。市場に対し、計画的に参入しやすい。創業者利潤が得やすい。デメリットは、変化が早くビジネス対応が難しい。参入のタイミングが難しい。いずれにしても、期間限定ということを意識したビジネス展開が求められるだろう。この市場が確立されると、様々な面に影響を及ぼすことが3つ予想される。1つは、ヤング・大人市場。これまで流行などの新しい動きはヤングから発生して、ある一定のタイムラグをもって他の世代に広がるというパターンが一般的であったが、これからはアクティブシニア発の流行が世代に影響することも十分ある。そのエッセンスは、これまでシニア市場の中心となる担い手世代が経験してきたものの中からアレンジされてでてくる事も予測される。2つ目は、世界への影響。日本のアクティブシニア市場は世界で一番早く高齢化社会に到達するころから、どう対応するか社会を形成するか注目されることになる。何かを輸出ということも考えられる。3つ目は、日本経済への影響。アクティブシニア市場は団塊世代が中心となる時、量的に大きい市場であるだけに日本経済への影響が十分にある。長期の不況から脱却する要素ともなりえる。タイミング的に言っても2005年前後から顕著化してくるアクティブシニア市場が、景気回復の1つの要素として役割を果たすのは間違いないだろう。

現在日本のファッション業界は依然として若く細い平均サイズ向けの商品が中心で、高齢者への対応は著しく遅れている。「ファッションは若くて細い人のもの」という固定概念は、高齢化が進むにつれてファッション業界を苦しめる結果になる。標準サイズが着られない女性は消費を控え、ファッションは若い人のものだと考えて興味を失う人も多い。現在のシニアはファッションに対し衣服のサイズや自分の体形に合ったものがない、サイズはあっても気に入った商品がないという不満を持っている。

ある百貨店は、平成11年に「素敵生活」いう売り場を立ち上げた。これはシニアをターゲットにした、60歳アップのシルバーのお客様に向けた企画だ。しかしこの売り場に適したブランドが見つからず、メーカーとの直接取り引きで品揃えし展開をスタートした。このように、実際の戦略を見てみてもニーズに対応しきれていないことが分かる。

一つ目のキーワードは「若さ」。団塊世代というのは、若い時にペアールックを経験した最初の世代である。休日の買い物や、ちょっとした国内旅行、ゴルフなど共通の趣味を楽しむにあたって何となく夫婦二人で色やスタイルを合わせるという傾向が強い。またカジュアル感はかなり進んでいる。調査時に普段着を見せてもらうと、ジーンズが出てくる最初の世代が団塊世代である。調査結果から、実際に50代はもちろん60代であってもシニア層は自分を「老人」などとは思っていない。「老後は何歳ぐらいからか」という質問に対して、40代のプレ・シニアでは「60代」を挙げる割合が高い。しかし回答者年齢が上がるにつれ、「老後」の年齢はどんどん先送りされていく。50代では、「60代までに老後を迎える」という回答は4割にまで減少し、60代になると全体の4分の1まで落ち込む。つまり60代のほとんどは、自分はまだ老後にさしかかっていないと考えているのである。「気持ちの上で何歳ですか?」という質問をすると、「実際の年齢より若い」という回答が50代、60代、70代前半のいずれにしても6割近い。首都圏の調査では、2000年の時点で7割の人が自分は実際の年齢より若いと答えている。以上のことからシニア向け商品などとつけるよりも、デザイン・テーストは若々しく歳を重ね体形が変わった人でも着られるようなサイズの取り揃えを必要とした商品が重要になってくる。

2つ目は「本物志向」。団塊世代は本物を極めた人が数多く存在し、量より質傾向である。シニアはきちんとした満足感に対して対価を払う人たちである。高くても品質の良いものを買うか?という調査(電通お買いもの調査2000年度)には60代女性が61%、男性が56%買うと答えている。又シニアは「品質が良ければ高くても買う」という傾向が強い人たちでもある。こうした満足感をいかに提供するかが大切である。

3つ目は「想い出」。シニア層が反応する刺激ポイントに「想い出」がある。60歳前後に集中する同窓会が具体的な行動につながってくる。シニア層にとって「想い出」は若者の夢に近い存在なのである。「想い出」を点検してみると「想い出」を素材にした商品、サービスの動きが目につく。映画「Shall we dance?」のヒットと「ソーシャルダンス」人気、「ウクレレ」人気に関連するハワイアン人気。アメリカでも「想い出」消費が注目されているという。日本でも既に50代・60代の人たちを中心に、若き日の「想い出」をテーマにした行動が目立ってきている。例えば次のような事例が指摘できる。若いときに時間的、経済的などの理由でやり残したテーマを実際やる(例ピアノ・海外旅行・油絵・陶芸など)。若いときにやっていてその後、止めてしまったことを再び始める。思い出の地を訪ねる。ハイキング、山歩きをする。昔の仲間や、夫婦で行動する。「夢」の実現と「想い出」の再現がファッションに重要になってくるだろう。4つ目は「趣味」。趣味を核とするライフスタイル指向が強まっている。時間的な余裕ができ、仕事以外の取り組みなど熱中度は高まっている。その軸となるのが「趣味」「カルチャー」である。カルチャーセンターなどへ通う人のニーズは様々である。余暇利用としてカラオケ・囲碁・将棋・写真などの娯楽、遊びレジャーを目的とする人。生きがい(自己啓発)として日本画・俳句など奥が深く洗練されたものを行う人。他には、健康・社交・老後対策様々な目的を持って通っている。これにより外出や人に接する機会が増える為、主役ではない脇役の洋服を必要としてくる。場所、用途を明確に提供出来るかが重要なポイントになる。洋服だけでなく、シニアを対象とした(洋服需要促進のため)エリア作りも大切だ。

各戦略はリンクしていてこれらがうまくいけば、アパレル業界の伸びも期待できる。キーワードは私たちの生活の身近にあるものである。これらを拾って研究し考える事が繋がっていくだろう。

おわりに

SPA企業出現、社会の新しい流れなどから企業、業界が今生き残りのために奮闘している。目先の現状だけを見つめていてはいけないのだ。今年の異常気象、地震などからいかに社会背景が関わっていて政治とも切り離せない関係にあるかが分かる。ファッションだけでなくこれからはどんな分野にも精通していなければ対応できない。私はこれからアパレル業界が生き残る戦略として、高齢化社会を挙げたがそれが今も見えないところでリンクし、それに向かって進み始めている。新しい戦略というよりも、基本に戻ってビジネスを考えるのが大切で必要とされている気もする。ビジネスチャンス、キーワードは難しくはない。こんな時代だからこそ、利益追求で不祥事を起こせば一気に企業は負けて顧客も離れあっという間に追い込まれる。情報公開しクリーンな経営もお客を集めるのも大切な事で今一番求められているのではないか。これからヤング世代主役からシニア世代主役へ移り変わっていくが、団塊世代は戦前の古い価値観に反発し学生運動などの象徴である。音楽・ファッション・風俗いわゆる「若者文化」を初めて築き、受験戦争、就職難、出世競争など競争社会を経験している。男女平等の戦後教育を受けたため、女性の大学進学率が上がり始めた最初の世代。女性の社会意識は高い。「核家族」と呼ばれる家族を築いた。私たち世代と共通していると思うのは私だけであろうか。「援助交際」メール友、洋楽の流行やHIPHOPなど歌って踊れる歌手の登場。就職難。犯罪も深刻化し新しい時代へ、突き進んでいる。この私たちが社会に進出し、高齢化社会に対応するのは出来ない気はしない。

これからのアパレル業界はまだまだ変革する。業界全体で縮小が進み、増収か減収か合併か倒産かのいずれかになってくる。ここ何年かが勝負の年であり、だいぶ縮小が進みすっきりしてしまうと思う。ただ裏原宿の若手のクリエーターが久しぶりに登場し、次世代のアパレル業界へ繋がっていく可能性を知っておいてほしい。NIGO氏(DJ)のA BATHING APE、マウジー(フェイデリック)をオープンさせた森本容子などは業績をあげ拡大、パリコレへ進出しようとしている。消費者に近い「カリスマ」の存在。逆をいえば消費者が販売側になれる時代になっているのだ。それは読者モデルなどの異様な人気。普通のモデル並みに人気である状況にも似ている。これはいかに消費者に近い人、物が必要とされているかが分かる。このことがアパレル業界にパンチを与えるかもしれない。

参考文献・HP