少年・少女の安全対策

第1章 現在の非行・少年犯罪

(1)非行の定義

(2)少年犯罪の現状

(3)「非行少年」

第2章 少年法の歴史

(1)旧少年法施行以前

(2)旧少年法の成立

(3)現行少年法の成立

(4)その後の動向

(5)各国の少年法の特徴と日本

第3章 被害に遭う少年・少女たち

主な事件と今何をすべきか

おわりに

参考文献

はじめに

近年少年による凶悪事件が発生していることを契機として、少年非行問題については、かつてないほどに高い関心が寄せられるようになった。今を生きる少年・少女にスポットをあてて、各方面において様々な角度からこの問題に対する議論がなされている。また一方で少年、少女を狙った犯行が増えてきている。その背景には何があるのか、また大人たちは今何をすべきなのかを考えていきたい。

第1章 現在の非行・少年犯罪

(1)非行の定義

本論文で論ずるにあたり、いくつかの定義をおこなっておきたい。

犯罪少年:罪を犯した14歳以上20歳未満の者

触法少年:刑事法にふれる行為をした14歳未満の者

虞犯少年:性格、環境などから判断して、将来罪を犯し、または刑事法にふれる行為をするおそれのある20歳未満の者

(2)少年・少女による非行と犯罪の現状

シンナー・覚醒剤吸引などがあげられる。その中で注目したのが、未成年者の喫煙・飲酒少年・少女非行として代表的なものとして、校内暴力、家庭内暴力、暴走族、である。それぞれのケースを見てみると、集団で喫煙したり、お店側が飲酒を勧めたりと様々であるが、これらの件は、1つの機関に責任を押し付けるのではなく、家庭、学校、地域などが協力してなんらかの対策を行わなければならない。その良い例が、日本たばこ産業(JT)などで組織する日本たばこ協会や日本自動販売機工業会などが、未成年者がたばこを購入できないようにするため、2008年中に全国に約62万台あるたばこの自動販売機すべてを、ICカードによる成人識別機能付きに切り替えることを決めたことである。これは実際に一定の地域で実験した結果、未成年者の喫煙による補導件数が激減するなど効果が上がったため、全国での導入を決めたものである。また、たばこ税を引き上げるということが2006年度の税制改正であげられているが、これも財政面だけでなく、たばこの値上げによる禁煙効果は、購買力の低い未成年に特に効果的とされる。このように常に未成年者の環境を変えようという意識が大切である。一方で1990年代後半以降、中学生や高校生による凶悪な犯罪はとどまるところを知らない。14歳未満の少年による非行は、14歳以上20未満の少年のよる犯罪と比べると人員は少ないが、社会に衝撃を与える事件が発生している。事例を挙げると、平成16年6月に長崎で、小学6年生の女子児童(11歳)は、小学校内においてカッターナイフで、同級生の女子児童(12歳)の首付近等を切り付け、殺害するという事件が起こった。平成15年7月に長崎、中学1年生(12歳)の男子が、長崎市内所在の家電量販店において幼児(4歳)を誘拐し、同日、同市内所在のパーキングビル屋上から突き落として殺害するという事件が起きた。この他にも、バットで殴打したり、ナイフで刺したりといった凶器を使った凶悪、残忍な事件が増えている。これらのことに関しては、犯罪を犯した少年・少女の背景には何が存在するのか、またその後の保護、また厳罰化される少年法が注目されている。

(3)「非行少年」

非行問題や少年犯罪の対策が議論されるなかで、人々の間にかなり大きな「非行観」の対立があるという事実も顕著になってきている。人々が、非行という言葉に対して抱くイメージはさまざまである。非行の一般的な概念には、侵害性と自損性という2つの要素が含まれている。非行少年のイメージとして、性格と環境の両面で問題のある少年、また成人犯罪者と比べて立ち直る可能性が大きい者として観念されている。このような非行および非行少年の一般的概念を構成している諸要素のうち、どれを重く見るかによって非行観の対立は生まれる。このように非行観の対立が存在するからこそ、少年法に対する意見も異なってくる。実際これこそが少年法の中でも完璧だという法律は存在しないのかもしれない。それほど少年法という法律は難しいのである。しかし、だからといってそこで立ち止まるのではなく、少年・少女が社会復帰できるようになる理想の少年法に近づくためにも努力が必要である。

第2章 少年法の歴史

(1)旧少年法施行以前

日本に「少年法」という法律ができたのは、1922年のことである。それ以前から、少年犯罪者は成人犯罪者と区別して処遇するという考え方は存在していた。

・1880年 旧刑法成立

旧刑法のなかで少年には刑を緩和し、12歳以上16歳未満の少年で是非の弁別がないときは、刑法上の罪を問わず懲治場に収容して教育を施すものとした。

・1900年 感化法制定

懲治場の処遇内容は一般に不完全だったので、感化法が制定された。感化院というのは今で言う少年院や児童自立支援施設のことであるが、その設置が各県の任意とされていたので実際には5施設しかできなかった。これらの背景には、征韓論争に敗れた西郷隆盛らによって反乱がおき、また各地で不平士族による反乱や農民による一揆が起きるなど自由民権運動が発生し、士族・豪農・議員らによって事件が引き起こされた。また自由党左派や窮迫した農民らが中心となった福島事件や秩父事件などの激化事件に成人者による事件が多かったために、感化院の設置が少なかったと考えられる。だからといって少年による犯罪が全く無かったわけではない。少年に対する処遇のベースは教育に力を入れるということであり現在とあまり変わりがない。

・1908年 新刑法施行

新刑法施行に伴って懲治場は廃止され、刑事責任年齢も14歳以上に引き上げられた。そのため新たな少年犯罪対策の策定が必要になり、それが旧少年法の制定を促すことになる。そこで感化法が改正されて各府県に感化院を設置された。不良少年に対する保護組織は一応確立されたのではあるが、まだ弱体であった。

(2)旧少年法の成立

・1914年 第1次世界大戦勃発

世界大戦終結後、戦後の混乱や貧困による窃盗など少年による非行・犯罪が激増し、少年犯罪特別法制定の必要性が痛感される。

・1922年 少年法制定

18歳未満を少年とし、検事が刑事処分か保護処分にするかを振り分ける形式をとっている。保護処分が適当と判断されたときは「少年裁判所」という行政機関が審判を行うものとされた。旧少年法は英米の衡平法思想に従い、福祉政策と刑事政策の両面からその内容を規定することを意図したものであり、「愛の法律」と呼ばれた。これは、わが国の刑事立法史上画期的な意義をもつ法律であった。旧少年法は少年を犯罪者として捉え、犯罪者対策の一環として少年に対する特別な処遇を構想している。よって、旧少年法は福祉法というよりも成人の刑事手続の特別法として存在していたといえる。つまり刑事司法の性格が強かったのである。また旧少年法は対象が限定されており、保護を必要とする少年すべてを対象とするものではなかった。

(3)現行少年法の成立

・1945年 第2次世界大戦敗戦

アメリカ・イギリス・ソ連の3国はポツダム会談を行い、その機会にアメリカは対日政策をイギリスに提案し、中国を加えて3国の名で、日本の戦後処理方針と日本軍隊の無条件降伏を勧告するポツダム宣言を発表した。日本政府が対応に苦しんでいるあいだに、アメリカは8月6日広島に、ついで9日長崎に原子爆弾を投下した。こした情勢のもとで、昭和天皇の裁断によりポツダム宣言の受諾を決定し、9月2日降伏文書に署名し4年にわたった戦争は終決した。マッカーサー元帥を最高司令官とする連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指令・勧告にもとづいて日本政府が政治を行うという間接統治の方法がとられた。戦後の憲法改正に基づいて、日本の法律制度の全面的な見直しが行われたが、少年法も例外ではなく、GHQのルイス博士から、全面改正の提案があった。司法当局も、旧少年法の全面改正に踏み切ることにした。1948年7月15日に新少年法が公布され、1949年1月1日から施行された。旧法と新法の根本的な違いは以下の3つがあげられる。

@行政機関である少年審判所は廃止され、少年に対する保護処分の決定は、司法機関である家庭裁判所の行わせることにしたこと。

A旧法の検察官先議・刑事処分優先をやめ、裁判官先議・保護処分優先に改めたこと

B少年法の適用年齢を18歳未満から20歳未満に引き上げたこと

このように少年法の基本構造が根本的に改められた。この新少年法の制定には、アメリカとの密接な関係のもとに改正された。

(4)その後の動向

刑罰適用範囲の拡大・少年審判手続の改善

○刑罰適用範囲の拡大

・検察官送致年齢を従来の16歳以上から14歳以上に引き下げる。16歳以上の少年が被害者死亡事件を行った場合は原則的に逆送にする。

○少年審判手続の改善

・非行事実認定の正確さを確保するための改正点

@故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪およびそれ以外で、家庭裁判所が、死刑・無期もしくは短期2年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件の事実認定の手続きに検察官の関与が必要と認めたときは、検察官を審判に出席させることができる。その際、少年に弁護士である付添人がいないときは、弁護士である国選付添人をつけなければならない。

A少年鑑別所に収容する期間については、これまでは、原則2週間で1回のみ更新がみとめられていたが、改正により、死刑・懲役・検証が行われる場合、審判の必要上さらに2回更新できることになった。

B審判に関与した検察官は家庭裁判所の決定につき事実認定に関する法令違反・重大な事実誤認を理由に、高等裁判所に抗告を受理するよう申し立てることができる。

C少年審判に裁定合議制(裁判長を含む3人の裁判官による裁判)を導入する。

D保護処分終了後であっても、非行事実がなかったことを証明する明らかな資料を新たに発見したときは、本人が死亡した場合を除き、保護処分をした家庭裁判所がその処分を取り消すことができる。

・少年審判の教育的機能を充実させるための改正点

@「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない」

A家庭裁判所は調査・審判において、保護者に対し、訓戒、指導その他の適当な措置をとることができる。

・審判に関係して、被害者への配慮を行うための改正点

@家庭裁判所は、被害者から事件に関する意見の陳述の申出があるときは、これを聴取できる。ただし、事件の性質、調査・審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、この限りでない。

A家庭裁判所から、被害者に対して、少年審判の結果を通知する。ただし少年の健全な育成を妨げるおそれのある場合はこの限りでない。

B被害者に対し、審判中および審判確定後、一定の範囲で非行事実に関する記録の閲覧を認める制度を設ける。この場合についても、少年の健全育成への配慮、厳格な守秘義務などが規定されている。

○2005年2月9日法制審議会「少年の保護手続に係る調査手続等の整備についてと題する改正要綱を答申した。

2005年2月9日法制審議会「少年の保護手続に係る調査手続等の整備についてと題する改正要綱を答申した。

@触法少年・虞犯少年に係る事件の調査

・触法、虞犯事件について警察官は一般的な調査権を持つこと

・警察官が警察職員に調査をさせる権限を持つこと

・警察官が調査のため、公務所・公私の団体から必要な事項の報告を求める権限をもつこと

・警察官が調査のため、少年または少年以外の者を呼び出し、質問する権限を持つこと等

A14歳未満の少年の保護処分の見直し

・家庭裁判所は、特に必要と認められる場合に限り、14歳未満の少年に対して少年院送致の保護処分を課すことができる。

・初等少年院・医療少年院の被収容者年齢の下限を削除すること。

B保護観察における指導を一層効果的にするための措置

・保護観察所長は、保護観察の保護処分を受けた者が遵守事項を遵守しないとき、遵守するよう警告を発することができ、さらに、それにもかかわらず遵守しなかったときは、家庭裁判所に保護処分の変更を申請できること。家庭裁判所は、調査・審判の結果、遵守事項不遵守の程度が重く、保護観察では本人の改善・更生は無理だと認められるときは、施設収容処分の決定をすること

・少年院長および保護観察所長は20歳未満の保護処分対象者の保護者に対し、少年の監護に関する責任を自覚させ、少年の更生に資するため、指導、助言その他の適当な措置をとることができること。

以上のことがあげられるが、年齢に関しては少年犯罪や非行の現状を見たら、14歳まで引き下げることは止むを得ないであろう。しかし、厳罰化することで少年犯罪や非行の減少につながるとは考えにくい。少年犯罪が低年齢化、凶悪化した背景にあるものを考えていかなければならない。現在の文化を見てみると、過激なゲーム、テレビなどで暴力映画が多い。また核家族化に伴い家庭での教育に問題がある場合もある。これからは「心」と「対話する能力」をいかに育てていくかが重要視されるべきである。その力を養う役割が大きいのが身近な場となる家庭と学校である。しかし、ちょっとしたことでも子どもの話を聞いてあげる、というような環境が現在減りつつある。

また、非行に関しては、万引きや深夜徘徊などがあるが、これらに対して地域が行う対策は無いだろうか。これらのように家庭、学校、地域、警察が協力しあい、この問題に立ち向かっていかなくてはならない。そしていち早く、子どものSOSの発信に気をつける、そのような環境が理想的である。一方で被害者のケアにも重点をおかなくてはならない。プライバシーに配慮し、非公開を原則とする少年審判に対し、被害者に関しては名前も顔も出てしまい、生い立ちや学校生活など隅々までマスメディアによって放送される。被害者や残された遺族の精神的ケアに力を入れるべきである。加害者の更生も大事だが、被害者のケアも重視すべきである。これからの少年法は被害者のケアもより多く考える必要があると思われる。

厳罰化に対して反対の声も数多くあるが、2005年に大阪市で姉妹が刺殺された事件が起きて、22歳の男が逮捕された。この容疑者は16歳の時に2人暮らしをしていた母親を金属バットで殴りつけて殺害している。その際「悪質な犯行」として「刑事処分相当」の意見書を付けて、家庭裁判所に送致されたが、少年審判で家庭環境なども考慮し「矯正は十分可能」と判断して送致せず、中等少年院送致の保護処分を決めたのである。母親殺害から約五年の間、少年院を三年余りで仮退院した容疑者は、パチンコ店勤務を経てパチスロで不正に稼ぐ「ゴト師」グループに入り、全国を渡り歩く生活をしていた。「更生教育」後も繰り返された残忍な犯行に、関係者は落胆した。このように必ずしも少年が更生するわけではないことを実感させられる。では、これからどうしていけばよいのか。まず、更生教育を見直すべきで、家庭裁判所も慎重に行うべきである。少年を更生したいという気持ちは誰もが持っている。だからこそこういう事件は二度と起きてはならない。そのなかで少年法が厳罰化へと進むことはやむを得ないのだろうか。

(5)各国の少年法の特徴と日本

・英米型

アメリカの諸州で行われ、イギリス(イングランド・ウェールズ)でつい最近まで行われていたもので、国の保護を必要とする少年法を広く対象とする少年裁判所が犯罪少年についても専属的管轄権をもつシステムである。アメリカで学校での銃乱射事件などが起こり、少年犯罪は凶悪化している。そのアメリカでは最初に少年を保護主義によって、成人とは異なる扱いで裁くために少年裁判所がつくられた。しかし薬物の使用や、銃を使った強盗などの少年犯罪が急増し、1970年代から厳罰化へと進む。それは保護主義という理念を変更することなく、少年司法の見直しを必要とした。

・欧州大陸型

ドイツやフランスなど西欧大陸諸国で行われているもので、少年裁判所は少年の犯罪事件だけを管轄し、その他の要保護少年は福祉法で取り扱うシステム。ドイツの少年法をとりあげると、少年刑法と少年援助法という2つの制度によって構成されている。その少年援助法とは、児童・青少年に対する保護、教育ないしは援助を目的とする各種の法規である。その対象は保護、教育、援助が必要な青少年であり、教育と援助を目的とすることから、教育・援助のための措置には原則的に児童・青少年の請求または同意が必要となる。

・北欧型

スウェーデンなど北欧諸国で行われているもので、少年裁判所は置かず、犯罪少年を主として福祉法に基づく行政機関の広範な活動の中で取り扱うシステム。

すべての国に共通する点は、少年に対する教育に重点を置いていることである。どの国の少年法もその時代に合った法律が施行されるべきで、常に変化しなければならない。

第3章 被害に遭う少年・少女たち

主な事件と今何をすべきか

少年犯罪や非行が急増する一方で、少年や少女が被害にあう事件も多発している。なぜ子どもたちが犠牲になるのか。立て続けに凶悪事件が起きている現在、小さな子どもを持つ親の不安は増す一方だろう。

・2001年6月 大阪府で児童8人が死亡、教師2人を含む15人が重軽傷を負った校内児童殺傷事件。

この事件で、惨劇を目の当たりにした子どもたちの心のケアが重要課題となったため、カウンセラーを学校に派遣し、大阪府、兵庫県も専門家らによる相談窓口を設置した。その後、教育委員会の調査によると、警察など関係機関との連携の取り組みは進んでいたが、来訪者の確認は小学校の約6割しかおこなわれておらず、十分徹底されていないことがわかった。不審者への対応として、出入り口でのチェックの徹底、保護者や地域住民との連携強化、頻繁に校内の巡回を行うことなどが挙げられている。学校の地域開放と安全は両立できないのであろうか。その後の動きとして、小学校と幼稚園の全教職員への防犯機器の配布、警備業者による子どもたちの集まる公園や学校のボランティア巡回や、防犯カメラ設置など独自の自衛策や、警察とのホットライン設置などが進んだ。学校に頼るだけでなく、保護者や地域が協力し、一体となって子どもの安全対策を行うことが必要となる。

・2005年11月22日 広島県の小学1年生(7)が下校途中にペルー人に殺害され、ダンボール箱に入れられてみつかった事件

この事件は容疑者がペルーでわいせつ事件を起こしており、また偽名で入国していた。このことに関して、法務省は、日系人が定住者資格を申請する際に、本国で罪を犯していないことを証明する資料の提出を義務付けることを今年度内に実施する方針を決めた。また以下の措置をとることも決定した。

@「偽装日系人」の入国を防止するため、出生証明書などの書類審査を強化する。

A偽名で入国した疑いのある者を調査し、身分を偽っていたことが判明すれば強制退去させる。

90年の法務省告示で、日系3世などに就労制限のない定住者資格が認められるようになり、日本で外国人登録するペルー人は急増している。この件に関して、杉浦正健法相は「真面目に働いているペルー人が疑いの目で見られることはあってはならない」と話した。これからは入国管理体制に関して見直さなければならない。

・2005年12月1日 栃木県の小学校を友達と徒歩で下校した女子児童が、友達と別れた後に所在不明となり、翌12月2日(金)、約60km離れた茨城県の山林内において遺体で発見された事件。

下校途中に襲われるという事件が起きてしまった。1番起きてはならない事件であった。この事件によって、登下校の時間に保護者が付き添う地域が多くなり、現在子どもを守るのは親しかいなくなってしまったのである。では親が気をつけなければならないことは何か。

@子どもの行動は、日頃から把握しておく。

A子どもの変化を見逃さない。

B安全な防犯環境をつくる。道路、公園、学校等。

C巡回パトロールを実施する。

D不自然な子ども連れには一声かけるか、110番通報する。

E何かあったときに逃げ込める「子ども110番の家」を把握しておき、子どもに教えておく。

まず子どもとのコミュニケーションは欠かせない。これは現在の家族で欠けている部分ではないだろうか。子どもと話すことによって、子どもの悩み、不安を少しでも解消し、非行の抑制、また子どもが被害者となることを防ぐことができるかもしれない。また、政府は犯罪対策閣僚会議を開き、子どもの安全確保のために2006年3月までにすべての小学校通学路の緊急安全点検を行い、安全マップを作製するほか、路線バスを「スクールバス」として登下校に活用することを早急に検討することを打ち出した。安全マップを作成したならば、子ども、保護者だけでなく地域の住民も目を通さなくてはならない。また「スクールバス」を導入することで登下校時の犯罪は減少するかもしれない。しかし「スクールバス」にも問題点はある。それは、各児童の自宅まで「スクールバス」で送ることができないことである。つまり「スクールバス」を降りてから自宅までの道が危険である。この問題に対して、アメリカでは、「スクールバス」を降りてから同伴を保護者に義務付けている。現在共働きしている家庭は少なくなく、この制度は難しいように思えるが、犯罪の減少には必ずつながるであろう。犯罪を抑制するには必ず保護者の協力が必要である。そして小泉純一郎首相は「最近の子どもに対する凶悪犯罪は国民の不安を増大させている。各省が連携して犯罪対策を強力に推進してほしい」と指示し、安倍晋三官房長官も「国民の皆さんも地域で安全確保のための活動に積極的に参加してほしい」と呼び掛けている。

・2005年12月10日 京都府の学習塾で、小学校6年生(12)が塾講師アルバイトの大学生に殺害された事件

ついに学習塾でも事件は起きてしまった。もう安心して預けられる場所はないのだろうか。この事件を見てみると、容疑者は以前に強盗傷害の疑いで逮捕されており、何故そのような人物を子どもの教育する場で雇用したのか。

以上のように子どもへの安全対策は急務である。まずは、家庭での教育から見直すことが必要である。家庭に求められることは、コミュニケーション能力を育てることであり、またその中で心の教育もおこなうことが望まれる。そのためには親子の会話は絶対に必要となる。学校の課題は「安全」と「地域への開放」の両立である。現在は多くの学校がこの件に関して模索している最中である。また、事件の増加によりボランティアで巡回している地域も少なくない。これらの動きが全国に広がると事件は減少していくのではないだろうか。これらのように何か1つに頼るのではなく、家庭、学校、地域、警察のすべてが協力して現在の問題に立ち向かわなければならない。

また、2006年度予算の財務省原案が内示されたのを受け、原案段階で認められなかった予算の獲得をめぐる各省庁と財務省の復活折衝が始まり、最近の治安悪化を踏まえた地方警察官の増員規模などが焦点となる。広島市や栃木県今市市の女児殺害事件などを受けて、文部科学省の「子ども安心プロジェクト」(24億円)や、警察庁の通学路の警戒にあたる民間ボランティア団体の活動支援策(5億9700万円)が、2006年度予算の財務省原案に盛り込まれた。子どもの安全を守る事業として、文部科学省は概算要求時点(10億円強)の倍以上の予算が認められた。文科省は、今年度から防犯のアドバイス役として警察官OBなどに委嘱しているスクールガードリーダーを計14億円の予算を計上し、来年度は2400人に倍増させ、対象を全小学校に拡大させる。新規事業では、全国1150地域を対象に、下校時間の違う低学年と高学年の子どもを集団下校させるため、学校の空き教室などに子どもを待機させ、その間、地域住民が面倒を見る事業費として7億円を計上している。携帯電話やICタグなどIT(情報通信技術)を活用した安全対策に関する調査研究を全都道府県でできるよう2億円も盛り込んだ。

一方、警察庁は2005年度から、地域住民、民間ボランティア団体による防犯活動の活性化のため、活動の拠点となる全国100地区を選定し、「地域安全安心ステーションモデル事業」を展開中である。2006年度には、新たに100地区を追加し、このうち50地区について通学路を警戒する団体を指定する。また、全国4地区に警察署への緊急通報が可能な「子供緊急通報装置」29基(2400万円)の設置なども認められた。

このように現在の治安の悪化により予算案にも大きな影響を与えている。子どもの安全を守るといった現在の生活に対応した予算が組まれるべきである。

おわりに

いつの間にこんな時代になってしまったのだろうか。少年法や教育現場、家庭、地域にはさまざまな課題がある。それらの課題は容易ではないが、それらをクリアしていかなければならない。そして誰もが安心して暮らせる社会に1日でも早く近づいてほしい。

参考文献