『今後の地方銀行』

はじめに

第1章 地方銀行とはなにか

第1節 地方銀行の特性

第2節 地方銀行の経営

第3節 健全性とは

第4節 都市銀行と比較

第5節 信用金庫と比較

第2章 地方銀行のメリット、デメリットとはなにか

第1節 地方銀行のメリット

第2節 地方銀行のデメリット

第3章 地方銀行の課題

第1節 地方銀行の課題とはなにか

第2節 デメリットをなくすには

第3節 今後の地方銀行

おわりに

はじめに

参考文献

1993年ごろから2003年ごろまで日本経済は非常に苦しい時代にあった。日本経済が「失われた10年」ともいわれた。経済が落ちこんだ理由として、消費税の引き上げ、日本銀行、都市銀行、地方銀行の政策失敗などさまざまなことが挙げられる。1993年ごろから、銀行の経営が落ちこみ、多くの主要銀行が破綻した。連鎖的に中小企業、大企業も相次いで倒産していった。

2006年現在、日本経済はいざなぎ景気(1965 年〜1970年)を超える長期成長を遂げつつある。日本銀行は、日本景気がよくなっていると公表した。日本経済に小さな光が差しこんできた。景気が上向きになっている理由として挙げられるのは、日銀の金融政策。以前とは違う銀行の経営方針である。「失われた10年」と現在の景気回復という対照的な現象がある。2つとも日本銀行、都市銀行、地方銀行など金融業界が大きく関係している。この3つの中でも、地方銀行について論文を書いていこうと思う。

本論文では、現在の地方銀行の役割。そして、地方銀行の課題を中心に論ずる。今後、地域がより発展してくための地方銀行の役割について、さまざまな部分にスポットをあててみたい。都市銀行が相次いで合併している中、地方銀行はどのように進んでいくべきなのか。地方銀行をこれからやらなければならないことは何であるか。これから金融業務に就く身であるため、少しでも自分の糧となり、役に立てばと考えた。

第1章 地方銀行とは?

第1章は、地方銀行は地域でどのようなことを目指しているかを説明する。そのため、銀行業務の中で有名な都市銀行や信用金庫との違いを説明する。特に、都市銀行ではメガバンクについて述べていく。

地方銀行とは全国(愛知県以外)に存在している金融機関である。地方銀行は、現在64行存在し、本店の所在している地域(都道府県)を中心として活動している。地方銀行は、地域において信頼される金融機関として、地域の人々ために貢献していくことを目指している。特定の地域に融資をすることで、地域が発展し成長する。そして融資した企業が大きく発展する。その結果、融資してくれた銀行にさらに融資を受けるようになる。地方銀行は、地域と共に発展していくことが経営方針である。第1節では地方銀行の特性とはどのようなことか述べていきたい。

第1節 地方銀行の特性

地方銀行は、本店所在地を中心とした都道府県で活動している。他の都道府県に本店所在地が存在する銀行よりも、所在地域に関する情報や繋がりが他県の銀行よりも強いつながりがある。地域の情報網が密であるから、迅速に対応することができる。特定地域社会に根強く営業しているので、地域の人々と厚い信頼関係を持っている。都市銀行が大都市で大きなシェアを持っているのに対し、39県では地方銀行の方が大きなシェアを持っている。大都市以外では、地方銀行の顧客利用率が高い。地域の顧客の中では、都市銀行より地方銀行のほうが必要とされている。そのため、地方銀行は、地域社会の金融の主導的な役割を果たしている。地方銀行は、金融活動以外に、地域のまつりや催しものに関して積極的に出資し、参加するケースが多い。地域に対して積極的に地域密着型であることをアピールしている。融資に関しても、都市銀行に比べて、地域の企業を中心として業務を行っている。

第2節 地方銀行の経営

都市銀行と比較すると、地方銀行は保守的な金融業務を行っている。保守的である理由として、都市銀行より資金力が少ないことがあげられる。地方銀行は資金力が小さいために、積極的にさまざまな分野に出資を行うことが難しい。融資を頻繁に行うことで顧客から預かっている貯蓄金が少なくなってしまうからである。貯蓄額がなくなってしまうと銀行は破綻してしまう。そのため、融資をする際に、安心して資金を出せる企業を見分けなくてはならない。

次に、イメージである。地方銀行は安全性を非常に大切にしてきた。地方に行くにつれて、顧客層は安全という言葉に敏感であると感じられる。安全は、地方の顧客を獲得するには、重要なキーワードである。安全性が重要視されている傾向があるため、地方銀行の経営は保守的な銀行が多い。現在は、都市銀行のように積極的に資金を動かして収益を得ようとする銀行も増加した。しかし、いまだに地方銀行は保守的な考え方が多い傾向にある。

第3節 健全性とは

健全性とはいかにその銀行は健康であるかをチェックするものである。健全性の中に含まれるものとして、自己資本比率がある。自己資本比率とはその銀行の総資産の中でうち、貸し出したお金が回収できなくなる可能性がある資産に対して、資本金などの自己資本がどれくらいあるかをしめすものである。銀行が国際的に取引する場合には、自己資本比率が8%以上でなくてはならない。国内で取引する場合にも、自己資産比率は4%以上でなくてはならないという条件がある。健全性が高いならば、銀行として良好であり、健全性が低いならば、破綻する可能性があるということをわかりやすく国民に知ってもらうものが健全性である。自己資本が少ない場合、大きな損害が発生した時に、資本金が減ってしまう。もし、資本金が底をついてしまった場合、預金していた顧客から負担してもらう可能性が出てくる。そのため、自己の資本金が多くあれば、その銀行の経営が危なくなっても、預金している顧客が直接負担する可能性は低くなる。

つまり、自己資本比率とは銀行の健全性をみるということだけではない。その銀行に預けている顧客を守るために作られているものでもある。健全性の中で自己資本比率を見ることでその銀行の経営状態がわかる。健全性は、顧客や企業の人々が重視しているため、銀行にとって最も考慮しなくてはならない部分である。健全性が低い銀行は顧客離れが進んでしまい、さらに自己資本を減少するという悪循環を引き起こしてしまう。現在は自己資本比率8%以上の銀行は数多く存在する。銀行の経営状態が良いと自己資本比率はあがっていく。銀行は、常に高い自己資本比率を目指しているのは、以上述べてきた理由によるものである。

第4節 都市銀行と比較

都市銀行とは、普通銀行のうち6大都市、またはそれに準ずる都市を本拠として、全国的に、または数地方にまたがる広域的営業基盤を持つ銀行である。現在、6つの都市銀行が存在している。

その中で、メガバンクと呼ばれている銀行が存在する。メガバンクとは都市銀行の中でも、特に巨大な経営組織となっている銀行である。現在は3大メガバンク体制である。

第1が三菱UFJフィナンシャルグループ。

第2がみずほフィナンシャルグループ。

第3が三井住友フィナンシャルグループ 、である。

そもそも、この3大メガバンクは、数多くの都市銀行の中に存在していた。バブル景気の頃、多くの銀行は莫大なお金を融資し、どんどんと利益を上げていった。しかし、いつまでもうまくは行かなかった。ついに1991年以降バブルが崩壊し、企業が相次いで倒産した。倒産した企業の中には、銀行から借りた莫大なお金を返済することができない企業が続出した。これにより不良債権が発生した。不良債権によって、銀行は急速に勢いを落としていった。1997年に北海道拓殖銀行と山一證券が破綻した。1998年にも相次いで銀行が破綻していった。国民の間で銀行は危険だというイメージが広がってしまい、ますます悪い方向に進んでしまった。この事態に対処するために、新しい転換策として、相次いで銀行は再編をよぎなくされた。その際、打開策として、銀行を統合する形を取った。それまで10行存在した都市銀行が、現在では3行になってしまった。これが、現在のメガバンクである。

メガバンクへと統合することによって、大きなメリットを生み出した。以前まで10行存在した銀行が、それぞれある部分に強く、メリットとする部分が存在する。たとえば、A銀行では、顧客数。B銀行では融資力。C銀行では資金力という具合である。このようにそれぞれの強い部分を持った銀行同士が統合して、お互いに必要な部分を補い合うことができた。統合した結果、これまでの銀行の役割がはっきりとし、幅が広がった。内部には、それぞれの分野のエキスパートが生まれ、より力強い銀行となった。まさに鬼に金棒である。

第5節 信用金庫と比較

銀行と同様、日本における預金の受け入れ、資金の移動や貸し出しなどを行う金融機関である。信用金庫は、1951年の信用金庫法によって設立された法人である。協同組織による地域金融機関であり、中小企業ならびに地域住民のための専門金融機関である。信用金庫には、大企業、信用金庫がある地域と関係がない企業・個人に融資することができないという制限がある。この制限が、都市銀行や地方銀行との大きな違いである。なぜこのような制度を作ったかというと「地域で集めた資金を地域の中小企業と地域住民に還元することにより、地域社会の発展に寄与する」という信用金庫の目的があるからである。

銀行と信用金庫との違いは、銀行は株式会社形態をとっているが、信用金庫は協同組織という組織形態の一種をとっていることがある。株式に相当するものは信用金庫の場合、会員の出資金である。その地域の属さない会社は会員になることができない。

次に、融資の問題である。協同組織形態をとるために、融資先に制限がある。融資先は、信用金庫の所在する地域の会員中小企業(従業員300人以下、あるいは資本金9億円以下)のみである。融資を受けるためには、会員(出資者)になることが必要とされる。会社が大きく成長した場合は、信用金庫から融資を受けることができなくなってしまう。

第2章 地方銀行のメリット、デメリットとはなにか

地方銀行と都市銀行、信用金庫の相違を明確にした上で、地方銀行はどのようなメリット、デメリットを抱えているのか論ずる。

第1節 地方銀行のメリット

都市銀行は大企業向けの出資を行い、全国的に展開している。その規模からして、巨額の金額が日々動いているのである。信用金庫はある特定の県の企業に出資している。出資するにも制限があり、地域の会員で中小企業が対象である。この制限を超えてしまうと、出資することができなくなってしまう。地方銀行には、都市銀行、信用金庫とは違う地方銀行なりの多くのメリットがある。

第1は、地域密着型ということである。本店所在地を中心とした都道府県で活動しているため、地域内での力は非常に強い。より詳しく分析すると、全国の39県で、地方銀行が預貸金の第1位のシェアを誇っている。顧客が都市銀行に比べ、地方銀行でお金を取引していることが分かる。地域密着ならではの指標である。地方銀行全体で都市銀行に次いで第2位である。地域別に見ていくと、大多数の地方銀行が顧客の利用率が第1位である。取引対象を、1つの都道府県に絞ることができるので、地域の情報網や流れを読むことができる。

第2には、融資の問題である。信用金庫の場合、第1章2節で述べたように、企業に融資する場合、融資制限がある。そのため、多額の資金を融資する力を持っていない。現在の信用金庫は700万円以内であれば、会員以外でも利用することができるようにはなった。しかし、この金額からして、信用金庫の主たる融資業務は、中小企業を中心としていることがわかる。資金面では都市銀行の方が多くの資金を持っている。これに次いで、地方銀行が多くの資金を持っている。このため、信用金庫は積極的な資金運用をすることができないケースが多い。積極的な運営をしてしまうと、企業が破綻してしまった場合、すぐに信用金庫の方にダメージがきてしまう。お金の循環するスピードが速くなる場合、企業に出資するお金と顧客の預金貸し借りの資金繰りがうまく回らなくなってしまう。そのため銀行に保管しているお金そのものがなくなってしまう場合が発生してしまう。

近年、地方銀行同士の間で、ビジネスマッチングという催しものが開かれている。この催しは、その地域で有名であり、素晴らしい技術の商品ばかりであるが、資金不足や積極的に全国展開しない店が出店する。このような会を催して、積極的に東京や大都市に商品として送り出そうという計画である。これがビジネスマッチングである。都市銀行でもビジネスマッチングは行われている。しかし、地方銀行はその地域だけのものを対象商品としている。地方銀行が、ビジネスマッチングに出品した企業と契約を結び、商品化して全国展開する手助けをする。あるいは、東京や大都市でこのような会を開いて、全国的に知ってもらうことが可能である。この2つのケースとも、優良商品が全国展開した場合、大きな知名度を獲得することとなり、地域が活性化される。これらのことを考えて、銀行側と企業が開始することを考えたのである。

都市銀行の場合、特にメガバンクは、融資に関して非常に力が強い。信用度、知名度共に全国に知れ渡っているため、企業は融資を依頼するケースが多い。メガバンクは日本のみならず、世界にまで視野を広げて、国際的な取引をしている。日本から、世界で活躍している企業を全面的にバックアップし、そこから日本のトップメガバンクを世界に宣伝している。メガバンクは中小企業に対しても融資しているが、大企業に出資しているほうが多い。大企業に出資するだけの資金がそろっている。大企業に出資することで、利子率が大きくもうけることができる。

地方銀行の場合は、都市銀行に融資の面で負けていると思われるであろう。ところが、そうではない。都市銀行の場合は、国際的な大企業、日本の大企業を中心とし融資しているのに対し、地方銀行は、地方で融資をして対抗している。その地域の中で大きな企業、中小企業に融資をおこなって、そこから利益を生み出そうとしている。都市銀行は、地方銀行に比べて、地方のことにはあまり目を向けていないといえる。地方銀行は資金面からも都市銀行に次いで第2位のシェアを持っている。東京の大企業に出資することはできなくても、地元の企業に出資することはできる。そのため、地域の企業からも地域密着型としての評価を得ている。地方銀行は、地域密着型だからこそ、このような戦略をとることができるといえる。地方銀行が出資した企業が成長し、日本の中でもトップクラスの成績を収めるようになったとしよう。このような成長を遂げた企業は、地元の人々からの人気を失わないために、地元の銀行から融資をうける。地元の銀行から融資を受けることにより、地域の人々と繋がっていることをアピールすることができるからである。これによって、地元の地方銀行は、企業とともに成長することであろう。

第2節 地方銀行のデメリット

地方銀行、デメリットについて論ずる。

第1は、地方銀行には資金力が小さいことである。地方銀行はその地域、地域で深い関係をもっているため、他の都道府県ではなかなか通用しない。そのため地域内での活動が多くなってしまう。その結果、顧客の確保、資金力の増加などが急激に増加することはない。つまり、地域が活性化しない限り、地方銀行の活性化も厳しくなるということである。この点については、第4章 地方銀行の課題で論じることにする。地方銀行は保守的ということもあり、積極的な経営をしていない。そのためなかなか大きな成長がみられない。堅実で信用性が問われる銀行であるが、積極的に行動をしなくてはならない分野で挑戦していかなくてはその銀行が大きく成長することはない。

第2に、小さい範囲での競争を強いられるというデメリットがある。例を挙げてみると1県に3つの地方銀行が存在しているとしよう。もし、大きな不祥事が一つの銀行に起きたとしたらどうなるのだろうか。他の2つの銀行に顧客が流れてしまうだろう。3つの銀行のうち1つの銀行の資金力などあらゆる部分が強かったとする。そうなると信用度からして、強い銀行に顧客が流れていってしまう。このため、地方銀行は、ごく限られた範囲の中で、あらゆる面で競争していかなければならない。

第3章 地方銀行の課題

前章で述べたように、地方銀行はさまざまな課題が存在する。今後、デメリットの部分を、これ以上悪くしないようにするためには、どのような工夫が必要なのであろうか。地方銀行を改善させるにはどうすべきなのか。メリットとして取り上げた部分を、いかに伸ばしていくべきなのか。これが、第3章で述べていきたいことである。

第1節 地方銀行の課題とはなにか

第3章で述べたデメリット以外に、地方銀行の今後の課題という部分が存在する。

第1に、収益の確保である。収益があればあるほど銀行は安全となる。他の企業もそうであるように、これぐらいあれば安心であるというほどの確保が重要となる。一度に多くの金額がなくなった場合にも、対処できるようにしなくてはならない。その収益を確保し、守るのではなく、積極的に使い、収益をさらに増やしていかなければならない。確保した収益を守っていくという方法も必要であるが、攻めることも必要である。攻めなければ、増えるということは一切ないからである。攻めると述べたが、ただ闇雲に攻めてはいけない。見極める目を持たなければならない。現在、フィービジネスを中心とした動きが広まってきている。フィービジネスとは投資信託や、保険業務を扱ったときに手数料として顧客からお金をもらう方法である。地方銀行も、多面的なサービスで顧客を満足させるようにしなくてはならない。

第2には、人材育成である。融資する際、この企業は融資して、成長するのであろうか、ということをしっかり吟味する必要がある。簡単にお金を貸してしまうと、バブル時代のように、不良債権がたまり銀行が破綻し、「失われた10年」の再来となる恐れがある。そのために必要なことが、融資先の可能性を見極める目なのである。地方銀行が、積極的な人材育成に力を入れることで、多くの知識を学んだ若い者たちが力をつけてくる。土台がしっかりとしたことで、管理職も危機感を感じ、より学び、相乗効果を生み出す。力をつけた若い者たちが管理職に就くときに、もっとレベルの高い経営ができる。現在、銀行は、従来の業務以外に、証券取引、保険業務などさまざまな業務をこなすようになった。それに当たって、幅広い知識を持っている人材が必要になる。その他にも、様々な業種や、商品に関する専門的な知識を持った人材を増やしていかなければならない。その業務のエキスパートと呼ばれる人物を育成することで、銀行の信頼がさらに増していくことになる。また、人材育成をすることで銀行の内部が活性化し、その結果、何倍もの利益として跳ね返ってくることになる。

第2節 デメリットをなくすには

どの企業にもデメリットは存在している。もちろん、地方銀行にもデメリットが存在している。では、デメリットをなくすためにはどのような取り組みをしなくてはならないのだろうか。第1には、銀行が、モラルハザードを起こしやすいということである。そのため、課題としては、モラルハザードを起こさないで、信用される銀行になることである。銀行が不祥事を起こし、顧客離れが起きたしまうことは非常に危険である。そのために、まず、不祥事を起こさない内部の取り組み・仕組みづくりから行わなければならない。その銀行の特色として、信用がある銀行と顧客から言われることが銀行にとって一番大事なことである。

第2には、資金力不足の問題がある。これは大きな問題である。大部分の地方銀行は、この問題に対する妙案を持ち合わせていない。その理由の一つが、人々の貯蓄行動の変化である。現在、預金をする人たちが少なくなってきている。退職した人たちは、旅行や遊び、趣味などに使うケースが増えてきている。貯蓄をするという行動や文化は、今や低下の一途をたどっている。そうなれば、ますます、銀行の資金力不足が深刻になっていく。そのため、地方銀行は、預貯金だけではなく、その他の分野で補っている。先ほども述べたがフィービジネスが新しく出てきている背景には、貯蓄を美徳とする風潮が消滅して行きつつあることが指摘できる。

現在、退職者や一般の顧客者が、あまったお金をさまざまな投資に向かうケースが増えてきている。そこで、銀行は、投資信託や保険業務のサービスを実施し、取引料として手数料を取って、資金を増やしている。この分野は、新しく開拓され、多くの銀行で業績が伸びている分野である。

都市銀行は、資金力があるため、あまり困っていない。都市銀行は、その資金を融資や投資に投下している。前述したように、地方銀行は、保守的になっている部分が多い。しかし、これからは、地方銀行は、攻めていかなければならない時代を迎えている。地方銀行は、自分たちの力で資金力を伸ばしていかなければならない。地方銀行が生き残りのためには、投資・証券という新しい分野を開拓し、強化すべきである。今までは融資として企業にお金を貸す立場であった。これからは、積極的にお金を出資していかなければならない。受身の立場にいてはならないのである。銀行が、利益をあげるためには、それ相応のリスクを背負わなければならない。利益とリスクは紙一重である。利益をあげるためにも、投資と証券が必要になってくる。これから投資と証券のエキスパートが、地方銀行の鍵を握ってくるだろう。

第3節 今後の地方銀行

地方銀行は、都市銀行とも違うし、信用金庫とも違っている。地方銀行がこれから発展していくためにはどうしたらよいのであろうか。

地方銀行が誕生してから130年以上が経つ。1990年代は「失われた10年」として経営が非常に難しかった時期である。その中でも地方銀行が残ってきた理由として挙げられるのが、地域密着型であったことである。地域密着型だったからこそ「失われた10年」を乗り越えていけたのである。そのため、今後の活動も地元を中心に営業を進めていくべきである。地元の消費者、地元の企業の経済が落ち込んでいる場合は助けていかなければならない。助けていくことで消費者、企業が信頼していくことであろう。信頼されなくては地域の中でも勝ち残っていくことができない。

しかし、同時に地域内にだけ基盤を置き続けるのでは進歩がない。その地域だけにこだわらずに、新しい地縁を求めなくてはならない。その際、地方銀行はその地域の環境にあっているのか、吟味してから乗り出さなくてはならない。その上で、銀行を大きくしていくべきである。銀行員の業務内容として、営業態度、あいさつ、日々の生活をしっかりとこなしていかなければ信頼は勝ち取れない。現在、銀行業務は幅広くなっている。融資、投資信託、生命・保険業務、住宅ローン、為替などさまざまな業務が存在する。顧客が必要としているものは日々変化していく。顧客のニーズにあったサービスを行わなくてはならない。そのためには、従業員はルーティンをこなすだけではなく、専門的な知識、経験を積んでいくことが不可欠となっている。

現在の地方銀行は、都市銀行に比べ保守的な立場をとっている。保守的なことは顧客にとって信頼でき、非常に大切なことである。しかし、今後地方銀行をより強く体力のある銀行にしてくためには積極的な部分を打ち出していかなければならない。そのために、投資、証券などの業務をつかうべきである。投資や証券はひじょうにリスクが高い分野である。従来は、リスクが高いため、あまり使用せず、敬遠してしまう企業も多い。リスクが高いため莫大な損益がかかってしまうこともある。しかし、その分大きなリターンとして帰ってくる。保守的な部分も温存しつつ、積極的に開拓する分野を必要としている。

また、融資について、安易に決めるのではなく、どの企業が優良か見極めることが重要である。それを見極めるエキスパートの育成が必要不可欠となっている。現場にいる若い者が力をつけ成長することは大切なことである。そのため、研修制度を充実し、若い者が勉強する機会を増やしていかなければならない。金融機関は今後5年後、10年後にはさらに変化しているであろう。その変化にいかにいち早く対応する加賀重要なポイントである。変化に機敏に対応する中で、その地域の特性を生かした取り組みを編み出していかなければならない。こうして、地域に必要とされる地方銀行であり続けることが可能になるのである。

おわりに

地方銀行について論文を書くにあたり、多くの書物を読んだ。内容はどれも複雑だった。さまざまな書物を読んだことで、今後の自分にプラスとなった。これから金融関係に勤めるにあたり、どのようにすれば、地方銀行の経済が発展していくのかを考えながら研究を進めた。近年、銀行は大きく変わろうとしている。不良債権により相次ぐ合併、破綻が起きた。しかし、さまざまな苦しい時期を乗り越えて、銀行の業務は幅広い取引ができるようになった。銀行の展開の中で、ますます、行員の能力が必要になった。

現在、日本の経済に明るい日差しが差し込んでいると日本銀行は述べている。それはまだ首都圏や大都市周辺だけである。小さな都市や町、村などはまだまだ経済の良い兆しは見えてきていない。その中で、格差は広がっていると思う。これから、地域間格差を縮めていかなければならない。そのためには、日本銀行、さまざまな銀行の政策がより必要となってくる。この政策の立案にあたって、地域という視点から組み立てていかなければならないことを結論としたい。

参考文献

本島 康史『銀行経営戦略論』日本経済新聞社 2003年

牧村 四郎・田丸 務『地方銀行』教育社新書 1988年

高野 正樹『金融新時代の地方銀行:64行の素顔と特色』金融財政事情研究会 1995年

大原 静夫『現代地方銀行論』新評論 1992年

参考WEBサイト

社会法人全国地方銀行協会http://www.chiginkyo.or.jp/index.shtml

信用金庫        http://www.shinkin.co.jp//

経済財政政策 内閣府 http://www5.cao.go.jp/keizai/index.html

Wikipedia http://ja.wikipedia