1998.4.13 に更新しました


序文 かくありし時過ぎて

本 文

■序文■    かくありし時過ぎて、世の中にいとものはかなく、とにもかくにもつかで、世にふる人ありけり。かたちとても人にも似ず、心魂もあるにもあらで、かうもののえうにもあらであるも、ことわりと思ひつつ、ただ臥し起き明かし暮らすままに、世の中に多かる古物語のはしなどを見れば、世に多かるそらごとだにあり。人にもあらぬ身の上まで書き日記して、めづらしきさまにもありなむ。天下の人の、品たかきやと、問はむためしにもせよかし、と覚ゆるも、過ぎにし年月ごろのこともおぼつかなかりければ、さてもありぬべきことなむ多かりける。

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Copyright (C) 1997 Toshihiro Hamaguchi