1998.4.29 に更新しました
本 文
■六■ かくて日のふるままに、旅の空を思ひやる だにいとあはれなるに、人の心もいとたのもしげに は見えずなむありける。師走になりぬ。横川 にものすることありて登りぬる人、「雪に降りこめられ ていとあはれに恋しきこと多くなむ」とあるにつけ て、
氷るらむ横川の水に降る雪も
わがごと消えてものは思はじ
など言ひて、その年はかなく暮れぬ。
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