1998.4.29 に更新しました


七 正月ばかりに

本 文

■七■    正月ばかり に二三日見えぬほどに、ものへ渡らむとて、「人来ば取ら せよ」とて書き置きたる。
  知られねば身をうぐひすの振り出でつつ
  鳴きてこそ行け野にも山にも
返りごとあり、
  鴬のあだにて行かむ山辺にも
  鳴く声聞かばたづぬばかりぞ
など言ふころより、なほもあらぬことありて、春夏 なやみくらして、八月つごもりにとかうものしつ。その ほどの心ばへはしもねんごろなるやうなり けり。

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Copyright (C) 1997 Toshihiro Hamaguchi