1998.5.16 に更新しました


第9段 内裏の東をば

本 文

■第九段■  内裏の東をば、北の陣と言ふ。梨の木のはるかに高きを、「いく尋あらむ」など言ふ。権中将、 「もとよりうち切りて、定澄僧都の枝扇にせばや」とのたまひしを、山階寺の別当になりて、慶び 申す日、近衛司にてこの君の出でたまへるに、高きけいしをさへ履きたれば、ゆゆしう高し。出で ぬる後に、「など、その枝扇をば持たせたまはぬ」と言へば、「もの忘れせぬ」と、笑ひたまふ。 「定澄僧都に袿なし。すくせ君に衵なし」と言ひけむ人こそ、をかしけれ。

★『枕草子』総目次へ戻る★

[ 浜口研究室の INDEX へ戻る ]

Copyright (C) 1997 Toshihiro Hamaguchi