1997.12.17 に更新しました
本 文
■第二九三段■
大納言殿参り給ひて、ふみのことなど奏し給ふに、例の、夜いたく更けぬれば、御前なる人々、一人二人づつ失せて、御屏風・御几帳のうしろなどに、みな隠れ臥ぬれば、ただ一人、ねぶたきを念じて候ふに、「丑四つ」と奏すなり。「明けはべりぬなり」とひとりごつを、大納言殿、「いまさらにな大殿籠もりおはしましそ」とて、寝(ぬ)べきものともおぼいたらぬを、「うたて。何しにさ申しつらむ」と思へど、また人のあらばこそは、まぎれも臥さめ。 主上の御前の、柱に寄りかからせ給ひて、少し眠らせ給ふを、「かれ、見たてまつらせ給へ。今は明けぬるに、かう大殿籠もるべきかは」と申させ給へば、「げに」など、宮の御前にも、笑ひ聞こえさせ給ふも、知らせ給はぬほどに、…………
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