簡単なLaTeXファイルを書く

LaTeXソースファイルはテキストファイルであるので、書くために特別なソフトウエアを必要としない。 テキストであることの利点は大きく、パソコンだけでなくスマートフォンからDropboxiCloudにあるテキストファイルを直接編集できるテキストエディタを利用して戸外でも書くこともできる。 タイプセットやLaTeX文法にこだわらずにいつでも何処でもテキストエディタを使ってどんどん書いていこう。

文字符号化はUTF-8を原則としよう。

タイプセットする時には、作成してあるLaTeXTeXソースファイルをTeX統合ソフトウエアで開くか、あるいは直接入力してファイルを作成してタイプセットする。

1行に1文だけ書く

LaTeXだけでなくHTMLファイルも、1行(行頭から改行文字までも文字列)に1文だけ(文頭から句点「。」まで)を書くようにすると、後からの編集作業がたいへん効率的に行うことができる。 LaTeX/HTMLでは、この1行1文主義を堅持しながらソースファイルを書こう。

LaTeXソースファイルは簡単に書ける

以下で、記号「\」はバックスラッシュである(Windowsでは円記号と表示される場合が多い)。 また、記号「%」(LaTeXでは特別な意味がある特殊記号)から行末(改行文字)まではコメントで、コメントアウトされた文字列はタイプセット時には無視される。

次のような行を含むテキストファイルを拡張子 .tex を付けて保存するとLaTeXソースファイルと呼ぶ。

\documentclass{jsarticle}
%プリアンブル部
\begin{document}
%ここに本文を書く
\end{document}

この例では、4行目だけに象徴的に「ここに本文を書く」とあるが、3行目と5行目の間には何千行でも好きなだけ文章を記述する。 3行目の\begin{document}と4行目の\end{document}で挟まれた「本文中」に文字列を入力・挿入してタイプセットすれば、LaTeXにおける特殊文字や記号の利用などで問題がない限り、PDFファイルが出力できるはずだ。

演習 1: 本文に適当な文字列を追加してTeXファイルを作成し、タイプセットしてみよう。 思うような結果をもたらしただろうか、いろいろ試してみよ。

目的とする文書に近づけるためにはタイトル情報は必須である。 そのためには次のように入力を追加しよう。 半角文字全角文字の使い分けには細心の注意を払う(たとえば、全角の{,}と半角 {,} とは違う文字である。全角空白「 」と半角空白「 」の違いは大変発見しづらい)。

\documentclass{jsarticle}
%プリアンブル部
\title{タイトル名}
\author{著者情報}
\date{日付}

\begin{document}
\maketitle

%ここから以下に本文を書く(何行にわたっても構わない)
\end{document}

本文冒頭(\begin{document}直後)に \maketitle があることに注意する。

演習 2: タイトル情報を記載してタイプセットしてみよ。 \maketitle をコメントアウト(%\maketitle のように半角で %記号を追加すること)をしてみるとどうなるかを報告しなさい。
演習 3: 本文中の文中に、「半角空白文字」を1つだけ、また連続複数挿入して(たとえば1つの半角空白「隣の客は よく柿食う客だ」と5つの半角空白「東京     特許許可局」)タイプセットするとどうなるかを試してみよ。 「全角空白文字」の場合にはどうなるかを試して、その結果を報告しなさい。

LaTeXで段落を区切る

LaTeXの段落は段落改行によって区切られる。

LaTeXの段落は本文行頭文字が字下げ(indent)されてタイプセットされる。 LaTeXソースファイルからタイプセットすると直ぐに気づくように、本文で1行1文主義を貫いて、「連続して」何行にわって文章を書いても段落(paragraph)は1つだけである。 ソースファイルに1行を続けて記載しても、行ごとに改行していても、タイプセットしてみると改行されずに文が連なっているわけだ。

LaTeXでは改行を2種類にわけて、段落改行強制改行とを厳格に区別している。

演習 4: 文書中で、段落改行と強制改行をなぜ厳格に区別する必要があるのかを深く検討して、報告しなさい。

段落改行と強制改行の方法

段落改行は次のいずれかによって行う。

強制改行

強制改行するには、行末にLaTeXコマンド \\(バックスラッシュを2つ続ける)を記入して、しかも、次の行を空行としない(空行があれば、段落改行となってしまう)。 強制改行時された次の行頭文字は字下げされない。

何やら書いてある。\\
次行を字下げせずに、あれこれ書きたい......

やっては行けない書き方

\\ を記入してわざわざ強制改行し、次の行を全角空白を追加して段落改行であるように見せかけるのは、全くの邪道で、誤った文書作成方法である。 行頭に全角空白を書くようなテキスト記述はその後の編集に余計な混乱をもたらすだけである。 LaTeXでは空行で段落改行されるため、そもそも行頭に全角空白を入力する必要がない。 LaTeXソースファイルは、文章構造を正しく反映させるためある。

何故ここで段落改行するのか?は、あるいは強制改行しなければならないのか?を明確に自覚しながら、LaTeXソースファイルを作成することが、文書作成の第一歩である。

字下げしないで「段落」を始める

さまざまな理由や事情から、段落改行になっていて段落先頭文字が字下げされないようにタイプセットしたい場合がある。 そのときには、次のようにLaTeXコマンド 強制改行するには、行末にLaTeXコマンド \noindentを行頭に書いて改行し、次の行頭から文を書くとわかりやすい。 後からの編集にも分かりやすく都合がよい。

.......
[空行]これで段落改行されるのだけど
\noindent
あれこれ書く......
演習 5: 文書中で段落改行と強制改行とを厳格に区別する理由を説明したLaTeXソースファイルを書いて、タイプセットしてみよ。

既存の文書ファイルのテキストを利用する

LaTeXソースファイルを作成するためにゼロから入力する必要はない。 既に作成したワードプロセッサ文書を再利用する(必要に応じて、切り貼りする)のが1つの方法である。 ファイルからテキストを「選択」「コピー」して、テキストエディタで編集しているLaTeXソースファイル内に「貼り付け」するのである。

とりあえずワードプロセッサで作成したファイルの全文利を用する場合、[編集]から「すべてを選択する」で文書内全ての文字列を選択して、[編集]から「コピー」。 次いで、テキストエディタ(またはTeX統合ソフトウエア)を起動し、新規ファイル(または、編集中のファイル)を開いてから、エディタの[編集]より文字列を「ペースト」する。 新規ファイルの場合には、直ちに適切なLaTeXファイル名をつけて保存する。

ただし、使っているTeXシステムのデフォルト文字符号化(最近のシステムでは文字コード UTF-8 である場合が多い)に併せて文字符号を変換し、拡張子 .tex をつけてソースファイルとして保存する。 これをもとにしてLaTeX文書用に編集するのである。

演習 6: 手持ちのワードプロセッサファイルの内容をLaTeX文書として別のLaTeXとして保存し、タイプセットしてみなさい。 上手くタイプセットできずにエラーとなった場合、そのLogウィンドウを観察して、どこで(何行目で)エラーが起こったのかを調べて、その原因を検討してみなさい。

LaTeXの特殊文字の問題が生したり、画像や図表を貼りこみたい場合にどうすればよいかを知ることは、読みやすく分かりやすい文書作成のためのたいへん良い教育的機会となるはずだ。