武侠小説資料Ｃ

☆朱貞木（一九〇五～？、浙江省紹興の人）・・華麗な文体と奇抜なシチュエイションを得意とし、技撃を講究すると同時に女性の情欲も描く。
代表的作品には、『羅刹夫人』『七殺碑』『蛮窟風雲』『飛天神龍』『虎嘯龍吟』『五獅一鳳』『龍岡女侠』『玉龍岡』『庶人剣』『辺塞風雲』『艷魔島』等が有る。

☆向愷然（一八九〇～一九五七、湖南省平江の人）・・一名「平江不肖生」、人物やシチュエイションに伝奇的要素が強く湖南地方の風俗描写も多く、作品に郷土の風俗人情を表出する。
代表的作品には、『江湖奇侠伝』『近代侠義英雄伝』『江湖大侠伝』『江湖異人伝』『江湖小侠伝』『江湖怪異伝』『烟花女侠』『半夜飛闘記』『双雛記』『艷塔記』等が有る。

☆鄭証因（一九〇〇～一九六〇、河北省天津の人）・・武功表現に極めて長じ、南に向愷然有れば北に鄭証因有りと称されている。作品中に新たな武技を多く創出し、武功一派の風格を築き上げている。
代表的作品には、『一字剣』『牧野雄風』『江漢侠踪』『飛豹奇遇』『龍虎闘三湘』『白山双侠』『鷹爪王』『續鷹爪王』『七剣下遼東』『大侠鐵琵琶』『女侠黒龍姑』等、約九三種が有る。

☆趙煥亭（一八七八～？、河北省玉田の人）・・向愷然と共に「南向北趙」　と併称されるが、作品中に登場する侠客の多くに儒学の風が有り、一般民衆の目線で当時の社会的矛盾や人々の苦悩を表出するが、道徳的価値を重視するあまり、文章に議論文がやや多く娯楽性では向愷然に及ばないが、風俗や人情及び人物の性格描写に関しては優れている。
代表的作品には、『殷派三雄伝』『尹氏三雄伝』『奇侠精忠伝』『双剣奇侠伝』『大侠殷一官軼事』『双鞭将』『北方奇侠伝』『辺荒大侠』『江湖侠義英雄伝』『奇侠平妖録』等が有る。

☆宮白羽（一八九九～一九六六、河北省天津の人）・・魯迅を崇拝して新文学の影響を受け、その成果を武侠小説に転用して成功した作家。作者の社会に対する態度は冷徹で、社会的悪に憤慨し、人情の裏に蠢く封建的罪悪を分析抽出しようとする。
代表的作品には、『十二金銭ヒョウ』『武林争雄記』『牧野雄風』『偸拳』『聯ヒョウ記』『毒砂掌』『雄娘子』『大澤龍蛇伝』『青衫豪侠』『太湖一雁』『龍蛇剣』『血滌寒光剣』『弾剣記』等が有る。

☆文公直（一八九八～？、江西省萍郷の人）・・伝統的章回小説の影響を受けて、忠侠の道を提唱する歴史演義派の代表的作家、そのため作品は歴史事実に依拠し登場人物も多く歴史上の人物と一致する。
代表的作品には、『女杰秦良玉演義』『碧血丹心大侠伝』『碧血丹心平藩伝』『赤胆忠心』『碧血丹心于公伝』『関山游侠伝』『剣侠奇縁』等が有る。

☆王度廬（一九〇九～一九七七、河北省北平の人）・・剛健な北派の武侠とも、文風有る南派の武侠とも異なり、清末の『児女英雄伝』の影響を受けたと思われる独自の武侠世界を作り出し、特に心理描写に優れており女性主人公を哀婉悲情の世界に描き出す。「男は命を用いて情を断ち、女は情を用いて命を絶つ」と言われる後世の作品である『獨臂刀』等に、影響を与えた作家である。
代表的作品には、『鶴リョウ昆論』『宝剣金釵』『剣気珠光』『臥虎藏龍』『鐵騎銀瓶』（以上、鶴鐵五部曲）『風雨双龍剣』『宝刀飛』『洛陽豪客』『新血滴子』『風セン四杰』『龍虎鐵連環』『河岳游侠伝』『香山侠女』等が有る。

☆姚民哀（一八九四～一九三八、江蘇省常熟の人）・・幇会の内幕を、彼等の特種用語（幇会の符丁）を駆使して自由に描き出す。作者自身が父親に従って実際幇会に出入りしていたため、その見聞や知識に基づく作品が多く、趣味性には乏しいが、有る種の社会性を持った会党小説作家である。
代表的作品には、『四海群龍記』『江湖豪侠伝』『太湖大盗』『龍駒走血記』『秘密江湖』『血誓』『死生朋友』『洛陽少年伝』『無情弾』『南北十大奇侠伝』『荊棘江湖』等が有る。

☆李寿民（一九〇二～一九六二、四川省長壽の人）・・一名「還珠楼主」、武侠小説に芸術的風格を与えた作家で、武侠の世界を現実社会から天上世界にまで飛躍させ、武侠の伝統思想である儒教に変わって仏教と道教の思想を持ち込み、人物は多様で人間以外に魔物まで登場させ、文章の気勢は縦横、シチュエイションは広大無辺で首尾一貫しない欠点は有るが、才気横溢たる独特なロマン溢れる奇幻世界を創造している。その独自な作品世界に因って、現代の代表的武侠小説作家である金庸・古龍・梁羽生・温瑞安等に多大な影響を与えた作家である。
代表的作品には、『蜀山剣侠伝』『蜀山剣侠后伝』『翼人影無双』『青城十九侠』『柳湖侠隠』『力』『蛮荒侠隠』『龍山四友』『蜀山剣侠新伝』『天山飛侠』『万里孤侠』『虎爪小王』等が有る。

☆顧明道（一八九七～一九四四、安徽省蘇州の人）・・武侠の世界に男女の愛情問題を加味し、多情多感な世界を雅致に富んだ文体で描き、纒綿たる男女の状態を創出するに過ぎ、武侠小説でありながら些か脂粉の気が多いのが欠点であるが、それは彼の生活空間である蘇州の清末民初の気風が些かなりとも影響を与えたと思われる。
代表的作品には、『荒江女侠』『荒江女侠新伝』『エツ脂盗』『龍山王』『侠骨恩仇記』『磨剣録』『紅粉金戈』『海外争覇記』『黛痕剣影』『虎嘯龍吟録』『草莽奇人伝正續集』等が有る。

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★その他の作家と作品★

陸士諤・・『新剣伝』『紅侠』『白侠』『古今義侠奇観』『七剣三奇』『剣三客』等。
孫玉声・・『九仙剣』『金陵双女侠』『仙侠五花剣』『飛仙剣侠大観』『呆侠』等。
何一峰・・『湖海大侠』『五岳剣仙伝』『万里情侠伝』『紅顔鐵血記』等。
許慕羲・・『飛天偸闘記』『歴代剣侠全伝』『侠女奇男』『新児女英雄』等。
張恨水・・『中原豪侠伝』『剣胆琴心』
江蝶廬・・『少林小英雄』『虎穴英雄』『大刀王五』『白眉毛』『金如意』等。
汪景星・・『少林女侠』『七山王』『八大奇人伝』『掌心剣』『神州七侠伝』等。
姜侠魂・・『風セン奇侠伝』『剣侠駭聞』『女子武侠大観』『雍正一百零八侠』等。
林　ジョ・・『水先生』『呂紫娥』『程拳師』『醉徐』『京華碧血録』『裘雅蘭』等。
雷珠生・・『江湖大盗』『南北武侠全書』『神刀豪侠伝』『江湖鐵血侠義伝』
銭基博・・『武侠叢談』
呉綺縁・・『清宮人』『游侠外伝』
徐　珂・・『清稗類鈔』
馮玉奇・・『大破玉佛寺』『万里行雲侠』『龍虎剣侠縁』『血泪仇』『鴛鴦剣』等。
李定夷・・『セン膿英雄伝』『武侠異聞』『僧道奇侠伝』
張憫子・・『三剣奇侠記』『江湖大侠記』『江湖秘密』『姉妹侠』『剣珠縁』等。
鄭逸梅・・『玉霄双剣記』
范烟橋・・『江南豪杰』『忠義大侠』『侠女奇男伝』『孤掌コウ鳴記』
徐春羽・・『風虎雲龍』『龍鳳侠』『宝馬神槍』『英雄台』『逃刑伝』『鐵観音』等。
許吟秋・・『双ヒョウ聯姻記』『明月蘆花』『双侠闘剣』『江村侠侶』『楓林情侠』等。
蘓曼殊・・『焚剣記』
李涵秋・・『侠風奇縁』『緑林怪杰』
李蝶荘・・『白太宮』『燕子飛』『七十二女杰』『緑林剣侠』『雍正剣侠奇観』等。
楊セン因・・『江湖二十四侠』『英雄復仇記』『龍韜虎略伝』『玄門剣侠伝』等。
張恨水・・『中原豪侠伝』『剣胆琴心』『世外群龍伝』『天外屠龍記』
張箇儂・・『現代武学大観』『四大剣侠』『千里独行侠』『南北游侠伝』等。
陳浪仙・・『歴代剣侠大観』『神仙剣侠図』『剣侠草上飛』
趙パ狂・・『剣胆琴心録』『太湖女侠』『神怪闘法記』『江湖怪侠』
趙景深・・『九龍罩』
唐　熊・・『武侠異聞録』『華屋剣光』『花魂侠影』『俄嵋剣侠』『海底盗』等。
張春帆・・『烟花女侠』『紫蘭女侠』『虎穴情波』『風セン剣侠』『嵩山拳叟』等。

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