《中國映畫コレ見ヨ(情念的・恣意的コラム)

15:「御三家」と武侠ドラマ

〜武侠の定番、金庸と古龍〜

 1960年代は銀幕が中心であったが、テレビ時代に入った1970年以後は、娯楽ドラマの定番とでも言うべき武侠ドラマが、今に至るまで連綿として作られ続けている。それらの作品の中から「五虎將」等を中心にスターが登場し、活躍の場をブラウン管からスクリーンへと広げているが、この事は、自前の俳優養成機関を持っていた香港のテレビ局の存在が、如何に大きかったかを示すものである。

 現在では、香港・台湾のみならず、シンガポールや中国各地のテレビ局等々が、陸続として武侠ドラマを制作し、毎年多数の作品が制作され、チャンネルをひねれば同じ様なドラマが役者を変えて、必ず何処かで放映されていると言う状況である。内容は、武侠小説を題材にした作品、或いはオリジナルに設定した作品等々多様であるが、やはり、中心に位置しているのは、「御三家」の小説に題材を採った作品である。

 この様なテレビドラマの近々10年前後の作品を眺めた時、メインはあくまで娯楽性の高い武侠ドラマであっても、歴史に題材を採った歴史ドラマや歴史的武侠ドラマも作られており、制作作品の顔ぶれから、時代の嗜好乃至は社会の嗜好が、微妙に伺われる。

 1990年代終わりから2006年前後にかけては、わりと歴史ドラマや歴史的武侠ドラマが作られた時代であろう。例えば、『還珠格格』(98年、清朝)・『雍正王朝』(99年、清朝)・『康熈微服私訪記』(00年、清朝)・『関西無極刀』(02年、宋朝)・『楚漢驕雄』(03年、秦漢時代)・『漢武大帝』(03年、漢代)・『大漢風』(03年、漢代)・『侠影仙踪』(03年、東晋時代)・『永楽英雄兒女』(03年、明代)・『龍票』(03年、清朝)・『争覇』(05年、春秋戦国時代)・『少年楊家将』(05年、宋代)・『大清風雲』(05年、清朝)・『大唐游侠伝』(06年、唐代)・『新三国志』(10年、後漢末)・『七侠五義』(10年、宋代)・『新水滸伝』(11年、宋代)等が、その代表的な作品であろうか。特に2003年の漢代ものを中心とした歴史的武侠ドラマの多さは、何か中国社会の変化が現れている様に思われる。

 しかしながら、メインはやはり娯楽的武侠ドラマで、その中でも「御三家(金庸・古龍・梁羽生)」の作品から題材を採ったドラマは、安定的な人気を保っている感が有る。代表的な作品としては、『笑傲江湖』(00年、金庸)『飛刀問情』(01年、古龍)・『新楚留香』(01年、古龍)・『蕭十一カ』(01年、古龍)・『鳳舞九天』(02年、古龍)・『流星胡蝶剣』(02年、古龍)・『新書剣恩仇録』(02年、金庸)・『射G英雄伝』(02年、金庸)・『連城訣』(02年、金庸)・『倚天屠龍記』(03年、金庸)・『天龍八部』(03年、金庸)・『大旗英雄伝』(04年、古龍)・『侠骨丹心』(05年、梁羽生)・『游剣江湖』(05年、梁羽生)・『神G侠侶』(05年、金庸)・『楚留香伝奇』(06年、古龍)・『大人物』(06年、古龍)・『浣花洗剣録』(06年、古龍)・『碧血剣』(06年、金庸)・『雪山飛狐』(06年、金庸)・『鹿鼎記』(07年、金庸)・『倚天屠龍記』(08年、金庸)・『書剣恩仇録』(08年、金庸)等であろう。

 この「御三家」の中でも圧倒的に多いのが、金庸作品と古龍作品とから題材を採ったドラマ群であり、この事は、武侠ドラマの定番は将に金庸と古龍とが双璧であった、と言うことである。因って「御三家」の作品は、今後も手を変え品を変え、役者を変えて次々作られて行く事であろう。

トップへ


[武侠小説の世界に戻る]