《中國映畫コレ見ヨ(情念的・恣意的コラム)

4:チョン・マンは何に化けてもチョン・マンよ

これは『AbocaVoしんぶん』(月刊新聞、送料込み年間購讀料1000円)4號からの転載である。

〜張敏〜

 張敏(チョン・マン)は実に不思議な女優である。決して飛び抜けた美女ではないし、年齢も若い方とは言い難い。役柄も、現代劇から古装劇まで、シリアスからコメデーまでと、何でも演じまくっているが、決してちょい役ではなく、必ず印象に残る役所ではあるが、だからと言って「主役」かと言えば「うーん」と首を捻らざるを得ない。年齢不詳の一寸小粋なお姉さん、とでも言える様な女優で、名バイプレイヤー所謂「助演女優賞」候補の役者である。

 一般的には「ミスコンテスト」から映画界に転じたと言われているが、それはあくまで彼女の「本格的な映画活動」の始まりを伝えている話で、実際の銀幕デビューは1953年の左几監督作品である『出籠鳥』である。恐らく子役であったろうと思われる。その後50年代から70年代にかけて、14本程の映画に出演しているが、彼女が本格的に活動し出すのは80年代からで、80年代に13本、90年代に85本、2000年代の4年間に9本と言う具合である。

 この中で、一見して目を引くのが90年代の85本で、年間8.5本平均と言うことになり、この十年間の映画には大概何処かに顔を出していると言っても過言ではなく、将に八面六臂の活躍でスクリーンを飛び跳ねるお姉ちゃんと言うに相応しく、「私が張敏よ」と言い張っているが如きである。彼女は1995年に、自ら「張敏電影公司」を設立し、95年の『狂情殺手』のプロジュースを手始めに、プロジューサーや監督業にも進出し、既に彼女のプロジュースにかかる映画は5本に登り、単なる女優業のみならず、今や香港を代表する映画人になっている。

 しかし、筆者の目から見れば、彼女のプロジュース作品や監督作品よりも、出演作品の方が良い。張敏はスクリーンを飛び回っての張敏であり、そこには彼女のかわいらしさが溢れている。若くはないが、何となく「かわいく、小憎たらしい」女優である。彼女は、一人で十分主役を張れる力量が有るように見受けられるのだが、わさわさと言う感じで諸々の映画に顔を出し、特に武侠映画と言えばやたらに顔を出す定番女優とでも言うべき女優である。しかし彼女は、何を演じてもどこか張敏であり、それが張敏の張敏たる所以でもあり、また彼女の最大の魅力でもあるように思われ、将に「私が張敏よ」である。

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