《中國映畫コレ見ヨ(情念的・恣意的コラム)

9:辨髪のスター、ジェット・リー

これは『AbocaVoしんぶん』(月刊新聞、送料込み年間購讀料1000円)9號からの転載である。

〜李連

 1983年の『少林寺』を見た時、単なる演技としてのアクションとは異なる軽やかな李連杰の肉体の躍動に、ある種の感動を覚えた。以後彼は立て続けに『少林寺U』『阿羅漢』に主演し、見応えのある華麗なアクションで観客を唸らせた。

 彼は1963年の生まれで、『少林寺』に主演した時は二十歳である。彼のアクションが軽やかなのは、単にその若さ故だけではなく、実は彼は十二歳から十六歳まで、五年連続の中国武術総合チャンピオンなのである。因って、そのアクションも宜哉である。その彼を、一躍本格的な大スターに押し上げたのが、1991年から6本主演した『黄飛鴻』シリーズである。

 その後、武侠映画や現代劇など31本の映画に主演しているが、『方世玉』にしろ『洪煕官』にしろ『張三豊』にしろ、基本的に「武打映画」である。武打は、武器を使う武侠とは異なり、素手の打ち技が中心である。とすれば、全作品の半数に当る16本が「武打映画」であれば、基本的に彼は武打役者と言えよう。それは現代劇でも同じであり、恋愛やシリアスを見せるのではなく、やはり武打である。要するに、映画の内容は関係無く彼は「武打アクションスター」なのである。

 『黄飛鴻』シリーズで見せた彼の弁髪姿は実に美しかった。恐らく弁髪が最も良く似合うスターは李連杰であろう。風に弁髪を靡かせて疾走する姿は、将に一幅の絵と言って良い。インパクトを与えた『少林寺』での坊主頭、『黄飛鴻』シリーズでの弁髪頭、これは強烈な個性と美しさを持っている。

 では髪が有ると如何、いけません、いけませんのいけませんである。一寸茶目っ気の有る顔立ちであるが故に、髪が無いとその美しさを際だたせるが、逆に髪が有るとその茶目っ気がお間抜け顔に変わってしまう。どんなにシリアスで厳しい顔をしても、髪が有るとどこかにやけてしまう。それは、現代劇のみならず古装劇(武侠)でも同じで、『笑傲江湖』でも『倚天屠龍記』でも、どこか三枚目である。最近の『英雄』に至っては、完全に梁朝偉に喰われている。 しかし、彼は大スターである。全出演作品がビデオ公開も含めて全て日本で公開されているのは、僅かにブルース・リーとジャッキーチェンと彼の三人だけである。更に香港映画からハリウッドに進出し、『リーサルウエポン4』では準主役を張っている。

 でもやっぱりお間抜けである。彼は、髪無し頭の大スター・弁髪頭のジェット・リーなのである。では果たして最新の『ロメオマストダイ』では如何であろうか、まだ見ていないが、きっとお間抜けであろう。

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