ギャラリー解説

青銅器

四川三星堆一号坑出土青銅跪坐人像(殷代中期、BC1500〜1300)

高さ33.5cm、横幅14cm

四川三星堆出土の人面像は、全て巨大な目を伴っているのが特徴

であり、現在出土品の大半が四川省博物館に所蔵されている。尚、

最近四川考古学の研究者である徐朝龍氏は、本坐像を西王母であ

るとの見解を提示しておられるが、小生は俄には肯首し難い。逆立

つ髪も食いしばった歯も、犠牲として殺される人の必死の形相のよ

うに思はれる。正面からは分からないが側面から見た時、肩から腰

・臀部へとつながる、流れるまでの美しい筋肉質のフォルムは、明

らかに肉体労働者つまり奴隷人のものである。更に最近では、使用

銅鉱石の成分分析結果から、黄河流域を中心とした殷代青銅器と

この長江上流の四川三星堆青銅器とは、ほぼ同じ銅鉱石を使用し

ていたことが判明している。尚、三星堆の青銅器の時代設定は、真

に悩ましい。共伴出土の土器群には明らかに新石器時代の様相の

品を含んでおり、現在では三星堆文化の範囲を龍山文化の初期に

当るBC2500年前後から殷王朝末期のBC1000年前後の、略15

00年間に措定している。その中で特に青銅器は、一般的に殷代中

期頃と言われている。しかし、どうも殷代末期から西周時代まで下

るように思われるし、形態が人面中心と言う特殊性は有っても、デ

ザイン的青銅鋳造技術は何か河北(殷)よりも劣っている(特にキャ

ストの複雑性に於いて、但し薄く作る技術はすばらしい)ように思わ

れるのは、小生の偏見であろうか。


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