ギャラリー解説

白銅器

白銅素文縁方格規矩四獸神鏡(從前漢後期至後漢初期、BC7〜AD75)

直径12cm、厚さ0.4cm

「四神」とは、我が国の高松塚古墳の壁画にも描かれている青龍(東)

・白虎(西)・朱雀(南)・玄武(北)の事で、これらの動物は、東西南北の

四方を象徴する神獣であるが、同時に国都の四方に鎮する守り神でも

ある。この鏡は漢代を通じてアトランダムに出現する物では決してない。

それはある時期に限定され、それ以前でもそれ以後(この場合は、隋唐

時代の四神鏡や瑞獣鏡は含まず、前後漢時代に限定してである)でも

現れず、前漢晩期から王莽時代、更に後漢初期の間に集中している。

この前漢末には、それまでの学問の総括則ち書物の整理校訂作業が

劉向・劉キン父子に因って行われており、特に劉キンは王莽の国師と

なっている。つまり前漢は表面的な統一とは別に、内実は完全なる国

家体制を確立するまでには至っておらず、特に理念上から言えば、前

漢末は「漢王朝は如何なるものか」・「国家的行動を律する儀礼は何か」

等々を模索し、確定させようとしていた時期に当たる。既述の如き四神

の持つ社会的或いは国家的意味合いを勘案した時、その出現時期と

王朝に在って国家の在り様が論議されていた時期との一致は、果たし

て単なる偶然の一致過ぎないとして片付けてしまえるであろうか。


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