ギャラリー解説

古陶磁器

宜興窯貼花毛澤東圖茶壺(民國以後、AD1950〜1970)

高さ12.9cm、口径7.5cm、横幅19.4cm、胴径12.4cm、

底径9.3cm、在銘、顧景舟(陰刻楷書一行款)

胴部に白泥で毛澤東図を貼り、その下に「忠」の字が

陽刻され、背面には「爲人民服務 毛澤東」の文字が

刻されている。1960年代の毛澤東崇拝のプロパガン

ダ作品の一つである。、この様な毛主席の図と言葉を

刻した茶壺は、形態は異なっても当時多く作られてい

る。仮に銘文通りの顧氏の作品であれば、在野の芸

術家(茶壺職人)でさえ、決して政治とは無縁では生き

られなかった時代の証左の一つでもある。顧景舟は名

を景洲と言い、1915年から1996年の間を生きた近

代宜興茶壺作家界のカリスマ的存在である。若い時上

海の骨董商に請われて、名品のコピーを多く作ってい

るが、自身の作品を制作し出して以後は、その名声ゆ

えに彼自身の作品のコピーが作られ出す、と言う程の

著名な作家である。蓋は、落とし蓋形式で、注ぎ口と執

手を取り除くと、所謂「蟋蟀罐」と同じである。その胴部

に毛澤東図を貼り付けた本品は、「所詮お前は罐の中

の蟋蟀だよ」との寓意を潜ませた、作家の精一杯の抵

抗の作品であろう、などと考えるのは、穿ち過ぎであろ

うか。尚、内注口は単口である。


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