ギャラリー解説

古陶磁器

青花纏枝蓮火炎珠文大碗(民國時代、AD1912〜1949)

高さ7.2cm、口径15.9cm、底径6.4cm、在銘、青花方款内「旗」

実に不可解な青花碗である。全体的紋様も落款もあまり類例を見ない。一応纏枝蓮紋と火

炎珠紋の組み合わせと見なしたが、落款は全く見たことが無い。見込みの紋様(左側)も落

款(右側)も初めて見るもので、顔料も手で触って分かる程青花に厚みが有り、上薬も厚す

ぎたために青花の発色がやや白っぽくなり、全体にくすんだ柔らかみを与えている。青花の

太線と細線の紋様は、明末清初に見られる纏枝蓮紋様の一種であり、上釉の厚さやその中

に多数発生している気泡のピンホールなどは、いかにも混乱した明末清初の燃焼温度の低

い窯で焼かれた様相を示しており、清初物の可能性が有るも、逆に清末物の可能性(なぜ

なら清末から民國にかけて、釉調が異なるものの類似の紋様を施した雑器が、陝西省澄城

縣の堯頭鎮窯で作られている)も無い訳でも無い。「旗」字の落款は、「清朝八旗御用達」の

銘文とも言われているが、真偽の程は不明であり、また同様に方款の線文内に漢字(恒な

ど)を書く落款は、民国初期に数点類例が有る。そのため一応時代を「民国」と措定しておい

た。兎に角不思議な紋様と落款を伴った青花碗であり、博雅の士のご教示を切に請う所以

である。


[ギャラリー一覧へ戻る]