ギャラリー解説
書画
蓮舟田邊泰一、行書七律(幕末維新、AD1831〜1915) |
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絖本肉筆・・縦124cm、横34cm 「田邊泰一」の下に、陰刻「田生之印」と陽刻「菁槎」の 落款が押されている。田邊蓮舟は尾張の人で、名は 泰一・太一、号を蓮舟・菁槎などと称し、幕府の儒官で 甲府の徽典館学頭であった田辺石菴の第二子で、昌 平黌で学んだ後に父同様に徽典館教授となった儒者 であるが、幕府より外国方に任用されて幕末の外国奉 行となり、二度に渉ってヨーロッパに派遣され、維新後 は外国少丞として岩倉使節団に随行して欧米を回ると 言う、当代きっての欧州通であるが、同時に花街では 粋人で鳴らし、更に島崎藤村の漢文の師でもあると言 う、外国通の漢学者で、彼の著した『幕末外交談』は、 当時の貴重な外交資料である。また泰一の長女が三 宅雪嶺の妻竜子(小説家三宅花圃)である。尚、本品 は、辛未(明治4年)天中節に青淵学兄宛に書かれた 品であるが、青淵とは、幕末に徳川昭武の随行員とし て共に欧州を回った、渋沢栄一(号は青淵)のことであ る。当時田邊は40歳、渋沢は31歳、共に壮年期の旧 幕臣として、明治の新政府に身を置いた時である。書 かれているのは明の王陽明の詩で、「軍前儒服・・・」と 諸葛亮の名が出てくる。当時の二人の心情が察せら れる一幅であろう。 |