ギャラリー解説蛟蛟

書画

黄虎洞手習い、陰刻自用印一顆(現代、AD2024、6、8)

縦横・・5x3cm

『詩經』小雅の伐木の句を金文で刻した、「出自幽谷遷

于喬木」(幽谷より出でて喬木に遷る)である。所謂「遷

喬の望(出世を願う)」の典據となった言葉で、本來は、

鳥が深い谷から高い木に移って行く様に、人も學識や

人格を高めて行く必要が有ると言う事である。一般的に

「幽谷より」の「より」は「自」を訓獨しているが、其れは

誤りで、『論語』の卷頭に有る「朋有り遠方より來たる」

は、「自遠方來」と表記されており、「自」を「より」と訓讀

するなら「自幽谷出」となる可きである。此處は明らか

に對句であれば、二句目の「于」と同様に置き字として

使用されたパターンで、於や于と同じである。要するに

「幽谷より」の「より」は、「谷」に付く送り仮名で、『易經』

雷の「需于血出自穴」や、『楚辭』天問の「出自湯谷次

于蒙」と同様な形である。


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