ギャラリー解説蛟蛟

書画

黄虎洞手習い、陰刻自用印一顆(現代、AD2024、8、2)

縦横・・5x3cm

戰國齊國の廣武君が韓信に語った言葉の一句を、『

史記』淮陰侯傳から小篆で刻した、「愚者一得知者一

失」(愚者の一得、智者の一失)である。廣武君は「智

者も千慮に必ず一失有り、愚者も千慮に必ず一得有り

」と言っている。この言葉は、本来朱文の小篆で刻する

豫定であった。頭と意識は朱文朱文と思いながら、「愚

」の字を彫り終えた所で、よくよく見てみたら白文を彫っ

ていた。愕然とした、朱文朱文と意識しながら目も一應

印面を見ている、にも關わらず手が勝手に白文を彫り

、其れに暫く氣がつかなかった。抗癌剤の副作用など

と言い譯は決してしない。此は明白な惚けで、惚けも

惚け大惚けである。確かに今までも物忘れはしたが、

己の老化現象が此處まで進んだ事例を、眼前に見せ

つけられて悲しくなり、愕然として暫く考え込んだ。


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