ギャラリー解説蛟蛟

書画

黄虎洞手習い、陰陽刻自用遊印二顆(現代、AD2024、10、9)

縦横・3.2x0.8cm

これも『論語』であるが、述而篇の十六に「子曰く、疏食を

ひ水を飲み肱を曲げて子を枕とす。樂も亦た其の中に在り」

と有る。其れをアレンジして戰國篆文で刻した、「素(疏)食樂

」(素食の樂)と、古璽文で刻した「曲肱樂」(曲肱の樂)とであ

る。貧しい中にも樂は有ると言う事である。漢文の面白さは、

原文の意味を變えずに字數が増やせる點で、四字句にした

ければ「樂」の上に「之」を加えれば善い、五字句であれば終

尾詞の「也」「矣」「焉」等を加えれば善いし、七字句であれば

出だしに「不亦」を加えて終尾詞を「乎」にすれば、「亦た曲肱

の樂ならずや」と成り、「なんとまあ曲肱の樂ではあるまいか」

と言う意味で最初の「曲肱の樂である」と本質的に變わらない

。更に八字句か九字句にしたければ、其の上に感嘆詞の「噫

」か「嗚呼」を付ければ良い。此が漢文の妙味で、一つの言葉

が有れば其處から諸字句の言葉が作れるが、全ての語句

に當てはまるものでは無く、出來る言葉と出來ない言葉との

辨別が必要である。今回は、石の長さから三字句にした、殘

念ながら己の力量では四字句は彫れなかった。


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