ギャラリー解説蛟蛟

書画

黄虎洞手習い、陽刻自用印一顆(現代、AD2025、6、12)

縦横・4.7×2cm

『孟子』梁惠王上の一句を金文で刻した、「爲民父母行

政」(民の父母と爲りて政を行ふ)である。爲政者たる者

の基本的なスタンスを言った言葉である。己は『論語』や

『孟子』を讀み出してから、已に六十年以上が經過した

が、其の讀み始めから孔孟の言に何か違和感を感じて

いた、其の言は尤もだと思う事も多々有ったが、同時に

釋然としない氣持が常に有った。其れは少數の治める

側に就いてはあれこれ言っても、最大多數の治められる

側に就いては、全く言及されていない點である。父母の

如き愛情を持って政を行うのは良い事ではあるが、其處

には「だからお前達は親の言う事を聞け」と言う、無意識

的上から目線を感じてしまう。孔子も孟子も治める側の

階層の人である、しかし己は治められる側の庶人であ

る、其の階層の違いに因る違和感、孔孟を論じながらも

決して好きになれなかった違和感である。


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